NoName

Open App


タバコは嫌いだけど
おいしそうにタバコの煙を吐く
パパの姿が好きだった
タバコをくわえながら
私のからまった釣竿の糸をほぐしてくれた
タバコをくわえながら
お昼どきにチャーハンを作ってくれた
煙がわたしにかからないように
上を向いてけむりを吐いていた
冬に肉まんを買ってくれて
私にわたしながら、パパはタバコを吸う
その灯りが小さくともる夜に
流星群をみにいった
さびしい景色も心地よかった
あのにおいに ふしぎと安心があった
目印のように

パパのいない世界で
白い吐息を吐く
何のにおいもない
からだには何の害もないけれど
涙はこぼれる
あの日一滴も出なかったのに

12/7/2025, 5:24:42 PM