NoName

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10/2/2025, 4:17:24 PM

あの人はやめなさい
ママは言った
どうして反対されると気になるのだろう
それならあの人にしなさいって言えば
わたしは興味をなくしたのかも
しれないのに

ママに似ていたの
困ったときの顔が 怒る唇が
鼻の形が 不器用なやさしさが
ママに似ていた

車窓を眺めて
あの人ときた町を横目に
わたしはそれ以上遠くへ行く
ざまあみろ
思い出は日々色濃くなって
あなたはどんどん遠くなる
忘れた日が一日もない
だからずっと遠くへ行かなきゃね
知らない町と 知らない人に会って
目まぐるしくしなくては
たくさん忘れていかなくちゃ


9/26/2025, 3:17:12 AM


仕事をやめた
あの人は言った
「こんな時期にやめるなんて信じられない」
体調が悪く、
面接会に行かなかった
あの人は言った
「いつまでそうしてるつもりなの?甘えているわ」
「みんな身体を壊しながら頑張っているのに」
あの人は言った 何かしらを
顔も見たくないとか 認めないとか そのようなことを
見なければいいし
認めなければいい

そのうち、あの人たちはどこかに行ってしまった

仕事をやめたとき
行きたくない用事を休んだとき
わたしの身体は言った
「ゆっくりしてくれてありがとう」
「おかげでゆっくり空気が吸える。助かるわ」
お茶がおいしかった

わたしの身体はどこへも行かなかった
あの人たちとは違って
いつまでもわたしのそばにいた

見て聴いて触って味わって嗅いで
わたしの身体はここにいた
きっと死ぬまで一緒だろう








9/12/2025, 3:14:44 PM

ニュースの上澄み
世界はどこでも物騒で
油断できないという
実際いったこともない街
話したこともない人たち
今日は何を食べたんだろう
どんな靴を履いてたの
何も伝わってこないよ
一日中しかめっ面ってことはないでしょう?
わたしのことも知られることもない
黒い蝶々に見惚れたこと
台風で水かさが増えた湖がうれしかったこと
今日も熊は見あたらずほっとしたこと
父といったススキ野原を思い返して泣いたこと
何もないけど生きているよ
それでもいいんじゃないかな




9/9/2025, 3:14:07 PM

恋ではあったと思う
だけど
乞い、だった
来い、だった

どこかへいってしまうあのひとを
愛することはできなかった
ほしかっただけのエゴ
コレクションに加えたかった
だからやめた

今度恋するひとは
遠くにいっても
こちらにいなくても
しあわせを願える人にしよう
そう思った

ただわたしが醜くならないため
わたしが愛するのはわたしなのだろう

8/5/2025, 2:00:31 PM

困ったような笑顔が
あたたかくて
わざと機嫌をなおさなかったんだ
ずっといてほしかったから
結びの言葉は言わなかったんだ
ありがとうなんて言ったら
最後になってしまいそうで
わざとらしい場面はいらなくて
ずっと愛って名前はつけない、でもきっと愛のやりとりが
とぎれずに
交互におこなわれてる
それだけでよかったよ
疑ったことなんてほんとはなかったよ
いなくなるなんて日はいらなかった
わたしはあの日から
欠けてしまった世界をながめています
なんにも足りなくて
さびしくて
でも気配も思い出もあって ほんとの意味ではさびしくはなくて
ひとりだけどひとりじゃなくて
みえないだけで
みえないけど いるよ
いるからね さびしがらないで

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