お月様、お願いです。
どうかその姿を現さないでください。
貴方が綺麗な円の姿になる日、
それが今日なのです。
今夜、私は彼女に想いを伝えます。
お月様、貴方が現れたら私の惨めな姿を彼女に晒してしまうのです。
だからお願いです。
どうか雲に隠れていてください。
こんなちっぽけな狼男の願いを
どうか聴いてください。
ー月に願いをー
涙雨がポツポツと私に降り続く。
空と私の気持ちは繋がっているのかしら。
だったら困るわ…。
私の気持ちが…空音が貴方に伝わってしまうじゃない。
大っ嫌いって言ったけど
本当に大好きだったの。
私は泡沫の様な貴方を愛していました。
この寂寞の思いが貴方に言葉で伝わるまで
きっとこの雨は止みません。
ーいつまでも降り止まない、雨ー
いまから1年後の今日には
きっと貴方はこの世にいない。
ただ、それだけを伝えたくて私は手紙を
かきました。
って……急だよね。ごめん。でも安心して。私は今、
たくさんの白い菊に包まれて幸せです。だから…もう
なかないでください。
ーあの頃の不安だった私へー
ある日突然、僕は余命宣告をされた
あと1ヶ月ほどの命だそうだ
良いことなんて僕には無いんだ
そう思っていた
天使が現れるまでは。
『僕とあそこで遊んでよ』
天使は空を指差した
「…どうやっていけばいいの?」
『僕は天使だよ?連れてってあげるさ、君を』
『さ、僕の手を掴んで』
空中で舞う天使は僕に手を差し出す
…綺麗だ
僕はその手を掴んだ…
そう
掴んだはずだった。
「え」
身体がフワッと宙に舞ったと同時に天地が逆さになった。
鈍い音が鳴り、僕は肉の塊になった。
ー逃げられない呪縛ー
あと1時間で今日が終わる
思えばとても長かったな
いや、
僕が決心するのが遅かったのか
もっと…もっと早く決めておけば…
こんな思いを昨日までしなくてよかったのだろうか。
……
深く考えても仕方がない。
昨日を終わりにしよう。
きっと……、明日はいい人生になるだろう。
僕は笑顔で紐に首を通した。
ー昨日へのさよなら、明日との出会いー