「どこまでも続く青い空」
顔をあげると、高く高く薄い雲が流れている。
気づいていないだけですでに季節は秋だった。
過ぎた日を想い、後悔に身も心も閉じ込める日々。
どこまでも続く青い空を羨ましく見上げる。
涙の理由には目を伏せて、がむしゃらに
曇った胸の内を言葉に変えて、また泣いて。
濁った視界に映るものはただの虚構だけで
本当に青い空は見えてなどいなかった。
「衣替え」
洋服箪笥を秋と冬とで埋め尽くす
薄手の長袖、厚手のニット
昼の暑さはまだ続く
迷い迷いの衣替え
こともなげに過ぎ行く時間と
進む季節の歩みの遅さ
さりとて、広がる秋晴れの空
「声が枯れるまで」
荒れる波間の岩の上、人魚は唄う
海の男を恋に狂わす魔性の人魚
されど、求めるはあの人ただ一人の呼び声
人魚はこいねがう
波に揺られる大船の甲板に立つあの人へ
とどけ、とどけと声が枯れるまで
吹き荒ぶ風は美しき歌声をさらい
あの人の耳へはとどかない
「始まりはいつも」
おはようございます
昨日は良く眠れましたか?
頭の中で自分自身に声をかける。
1日の始まりはいつも、自分への挨拶だ。
朝夕は冷え込んできて毛布を手放したくなくな
る。だけど、起きなきゃいけない。
どんなに眠かろうと朝日を浴びて、朝食を摂る。
絶好調ではないけれど、それなりに動ける。
それで良しとしよう。
今から出かける人へ、行ってらっしゃい。
これから眠る人へ、おやすみなさい。
毎日、お疲れさまです。
「子供のように」
物を無くしたらこの世の終わりのように泣いて
大人に叱られれば一丁前に反抗し口を尖らせる。
楽しみなことがあれば前日からはしゃいで
素直に全身全霊で感情を表した過去。
今は胸の中で静かに噛みしめることが
最大限の感情の表現になった。
ただし、鈍くなったわけではない。
感情を隠す知恵を身につけたのだ。
だから、顔には出ていないだけで
心の中では素直な子供のように感情は動いている。