ありがとう、ごめんね
ある日の夜、車を走らせていると
一匹の子猫を見つけた
車を止め、子猫に近づくと
とても痩せていて、それでも懸命に鳴いていた
母猫を探したが、近くにいないようで
見当たらず
このままにしておくのも可哀想で
子猫を車に乗せ
動物病院で見てもらうことにした
診察をしてもらい
栄養が足りてないので
点滴を打ち、薬を処方してもらい
食事を栄養価の高いものを
買った
そして、医師に言われた
この子猫は腎臓が悪いことで
体が弱く長生きは出来ないかもしれない…と
医師の言葉より何より
この子猫を我が家で飼うと
この時にボクは決めていた
子猫にはチビと名前をつけた
ちなみにチビは女の子
ペットを飼うのは初めてだったので
友人や会社の同僚やネットの口コミで
調べて必要だと言われたものは
全て購入した
チビは日に日に元気になった
走りまわり、ソファーでくつろぎ
キャットタワーの上から
ドヤ顔で見下ろしてみたり
朝早くに起こされ
遊ぼうと誘ってくる
仕事に行くのさえ
玄関前で淋しいよ!行かないで!
とニャーを連発され
仕事を終えて帰れば
まず、甘えるだけ甘えてくる
そして、台所に向かって歩き
ご飯と言わんばかりの
ニャー
を連発してくる
寝る時間になると
チビは必ずボクの隣で寝る
ツンデレなチビとの生活が
楽しくて幸せで
ボクは医師の言葉を忘れていた
チビとの生活も、もうすぐ1年という頃
チビはあまりご飯を食べなくなっていた
むしろ、吐くことが増えた
遊ぶより、横たわる時間のほうが
長くなっていた
心配になったボクは
「チビ、明日病院に行こうね」
そう声をかけチビの隣で眠った
朝になり目を覚まし
チビの顔を見るとまだ眠っているようだった
「おはよう」
そう言って撫でたチビの体は冷たくなっていた
一瞬、何が起きたのかわからないほど
ボクの思考は止まっていたはずだ
「チビ、チビ、チビ」
無我夢中で
チビを抱きしめて
声をあげて泣いた
チビ、うちに来てくれてありがとう
そしてごめんね
もっと早くに病院に連れていったら
何か変わっていたんだろう
できたことがあったはずなのに
感謝や後悔が心の中に
何度も湧いてくる
チビ…
ありがとう、ごめんね
この言葉を呟きながら
チビと火葬場に向かっている
夢と現実
昔、片思いをしていた彼と
SNS で偶然出会い
何度かやりとりしたあと
後日、二人で食事をすることになった
私と彼は、30才を過ぎており
オトナの関係になるには
時間はかからなかった
互いに独身であること
彼の仕事に対する姿勢や考え方
彼という人間性すべてを
私は好きになっていった
12月の初めベッドに横たわる
彼に「ねえ、私達ずっと一緒よね」と聞いた
「私達、付き合ってるよね」
彼は眠そうに答える
「ああ、わかってるだろ」
「好きに決まってるじゃないか」
そう言って抱き寄せてくれた彼
私は幸せで『夢』を見てみるような気分だった
12月中旬
彼とホテルからの帰り
「ねえ、クリスマスは会える?」
少し先を歩いてる彼が振り向き
「ああ、会えるよ 25日に会おう」
なぜ24日じゃないの?
私は彼女なんじゃないの?
私は耳を疑い、不安が横切った
私は24日 彼のマンションを見張っていた
すると、彼の隣に見知らぬオンナがいた
腕を組んで仲良さげに笑い合っている
マンションの出入口に差し掛かるころ
「誰よこのオンナ!」
「私のこと好きって言ってたじゃない!」
私は彼に怒鳴った
彼はオンナを庇い、警察に連絡するよう指示している
数分後、警察が来るなり彼は私を指さし
「この人ストーカーなんです!」
「しつこくて迷惑なんですよ!」
彼の『現実』では
私はストーカーだったってことね
彼に夢を見た私がバカなの?
ただ浮気したいだけの彼がバカなの?
パトカーに乗せられ
私はぼんやりと考えていた
長文失礼しました
終わり
さよならは言わないで
夢を追いかけ
今日、住み慣れた町を離れるボク
小学生の頃飼っていた犬が
病気で虹の橋を渡ったとき
ぐしゃぐしゃに泣きながら
獣医になろうと決めたんだ
中学生のとき
同じクラスの体も声もデカイ女子がいて
その夢をなぜかキミに話した
よく一緒に勉強して
必ず獣医になれるよ!と
根拠のない太鼓判を押され
たくさん応援してくれたね
高校は離れてしまったけど
家が近かったから
よく最寄り駅まで歩いたね
そういえば、キミは少しスレンダーになって
うっすら化粧してたな…
声は相変わらずデカイけどね
大学受験がいよいよ大詰めを向かえて
キミと話す時間すら惜しくなってた
キミと話したのは、合格発表の数日後
受験に合格したこと、
一人暮らしのため、引っ越しをすること
業務連絡みたいな話しだった
キミは、わかった!とだけ話した
そして今日、ボクはこの町を離れる
駅のホームでキミに
今までありがとう、元気でね、さよな…
そう言いかけたとき
さよならは言わないで!
また会おうって言って
そう言ってキミはぐしゃぐしゃに泣いていた
おわり
光と闇の狭間で
私は歩いている
右は光がきらめき
左は闇に満ちている
私はどちらにも傾かない
私は光と闇の狭間を歩く
中庸がいい