君と一緒に、いつもお世話になってる共通の友人の誕生日を祝したサプライズパーティを画策した
事前に豪勢な料理を作り、パーティでそれを振る舞う
クラッカーを鳴らしたり、おめでとうと言って拍手を贈ったり
僕や君が誕生日、というわけではないけれど、主役でなくともとても楽しい夜だったね
案外こういうのは、サプライズする人の方がより楽しめたりするのかもしれない
パーティの一部始終を録画することも、もちろん忘れなかった
一生の思い出にするためには、映像に残すことも大事だろう
最後はもちろん、誕生日ケーキで締める
こうして騒がしく、高揚感に満ちたサプライズパーティはお開きになった
後日、録画したパーティの様子を贈ったが、誕生日パーティの主役である友人は、困惑した様子
何度も説明を求めてきた
……そりゃそうだ
あの誕生日パーティには、当の友人は招いていないのだから
君と二人で勝手にやったんだもんね
困惑するに決まってる
澄み渡るよく晴れた空
まさに冬晴れ
寒さはあれど、多くの人々が過ごしやすい天気
しっかり防寒すれば、行動を妨げる要素は何もない
太陽のもと、人々は歩を進める
……くっそがぁ!
雪降ってくれよ!
電車止まってくれよ!
バスも止まってくれよ!
今日の予定を中止にしたいよ!
やだよ俺
行きたくねえよ
友達の誘いを断りきれなかったのも悪いけどさ
押しが強いんだよあいつ
断ると食い下がってさあ
強く言うと、なんか逆ギレし始めるし
面倒くさくてOKしちゃうじゃん
他のやつにはそんなことしないのに、俺にだけするんだよ
あいつ俺のこと舐めてんじゃないの?
なんで興味もないお笑い芸人のライブを見に行かなきゃならんのか
ひとりで行けよ
前も付き合わされたけど、何も笑えなかったよ
他の客は笑ってたけどな
雪降らないかな
降らないよな
降れよ
降ってくださいよ
初雪は今日がいい!
積もれ!
……積もらないし降らないよね
知ってるよ
相変わらずの見事な冬晴れだ
でもね
雪は積もらなかったけど、なんか怒りが積もって限界突破してきたよ
最初からこうすればよかったんだ
今までの恨みの全てを込める
相手が何を言おうと無視して、不満を一方的かつ激しくぶつけてやる
絶交すら覚悟の上でな!
なんだか楽しくなってきたぜ!
今の俺は相当悪い顔してんだろうな
へっへっへっ
「幸せとは何だろうね?」
博士が突然そんなことを言い出した
研究に集中しすぎて疲れたのだろう
科学以外のことを考えて気分転換しようとしたのかもしれない
気分転換するような内容じゃないと思うけど
「人それぞれじゃないんですか?」
ベタだけど、それが真理なんじゃないか?
「そうだね
愛するものと過ごす
趣味に没頭する
人生をかけた事業を成功させる
美味しいものを食べる
様々な幸せの形があるね」
博士の出した例はよくある幸せの形の数々だ
博士のことだから、普通に思いつかないような、変わった幸せを言うかと思った
「しかし、人類共通の幸せというのもあるんじゃないかと、私は考えてるよ」
「そんなのありますかね?
けっこうバラバラだと思いますけど
それこそ、人の数だけ存在してません?」
共通の幸せ
本当にそんなものがあったら、それがわかれば世界は平和になるかもな
でも博士は確信しているようだけど、さすがに無いんじゃないか?
「私も同じ意見だったよ
だがね、考えるうちにひとつの結論に至ったよ
共通の幸せとはこれだ、とね」
気になる
博士はとんでもなくすごい発見をしてきた人だ
そんな博士はなにが人類共通の幸せと結論づけたのだろう
「聞きたいかい?」
「もちろんですよ
なんなんですか?」
「それはね」
博士はコホンとひとつ咳払いすると、とても真剣な眼差しで僕を見た
「快楽物質を始めとする脳内物質だよ」
……ん?
なんか思ってたのと違うな
快楽物質?
脳内物質?
「人類が幸せを感じる時、それは幸せや快楽を感じる脳内物質が分泌されている時だ!」
ちょっとやばい方向へ行ってないか、博士
「つまり、そういったポジティブな気持ちで満たす物質を出し続ければ、人類の幸せは約束される!」
「あの、それって、幸せなんですか?」
「間違いなく幸せだよ!
心配も不安もなく、死ぬまで幸福感と快感が続くんだ!
嫌なことという概念自体が消失するんだよ!」
完全に思想の強いマッドサイエンティストの考えだ!
「そして私は人に栄養を送り続け、快楽物質等も分泌させ続ける素晴らしいマシンを開発した!
このマシンの中に入れば、この世は楽園になるはずだ!」
「博士、落ち着いてください
あなたは今、正気を失ってます
働きすぎです
いったん寝ましょう
睡眠不足は頭をおかしくしますから」
疲れて頭がおかしくなっているだけだと信じたいが、この人なら本当にマシンが完成済みということもありうる
「……私もわかってるんだよ
そんなのは幸せじゃないってね」
あれ、空気が変わった
「でもね
今の私は幸せじゃないんだ
好きだった研究も苦痛になり、家族にも捨てられ、趣味も仕事に忙殺されてできない……
もう快楽物質でもなんでもいいから、幸福感を手に入れたかったんだよ!」
博士、色々大変だったんだな
僕はたまに手伝うだけだから気づかなかったけど
「博士
もう明日からしばらく全部忘れて博士の好きな美術館や博物館を巡って存分に楽しみましょう
そうでもしないと、限界突破しちゃいますよ
研究所の方には、僕から事情を話しますから」
「ありがとう
そうさせてもらうよ
……ところで、マシンは一応完成してるんだが、少しでいいから試してみないか?
研究者として成功か失敗か、知っておきたいんだが」
「絶対に嫌です」
「初日の出を見に行くぞ」
1月4日未明のことである
俺は意味不明な言葉で親父に叩き起こされた
初日の出ってなんだっけ?
1年で最初の日の出のことじゃなかったっけ?
なんで4日に初日の出を見るなんていうわけのわからないことを言ってるんだこの親父は
「お前は今年が始まってから今日に至るまで、日の出の瞬間を見たか?」
「いや、見てないけど」
「じゃあ初日の出だ」
なんだそりゃあ
親父は初日の出をその年に初めて見る日の出と定義したらしい
そもそも俺、去年も一度も見てないけど?
というか、親父の行動が疑問なんだが……
「なんでわざわざ、ただの日の出を見に行くんだよ?」
「ただの日の出じゃない、初日の出だ
俺は今年の元日に初日の出を見ようとした」
それは知らなかったな
というか、親父がなんだか遠い目をしているが、わざとらしくてウザいぞ
「けど、年越し番組を見ている最中についつい寝てしまった」
「で、初日の出を見逃したと」
「そうだ
悔しかったので、今日を初日の出とする」
この親父はバカなんじゃないかな
どうしてそんなバカ丸出しな言葉でキリッとできるのだろう
それと俺を連れて行こうとする理由は?
「そんなもん、ひとりで行ってきてくれよ
なんで俺を起こすの?」
「ひとりで見に行っても暇だろう?
話し相手が欲しかった」
なんて身勝手な理由だ、腹立つな
絶対に行ってやるものか
もう一度寝てやる
本当に寝られるかは置いといて
俺が親父の頼みを断り、布団に潜る準備を整えようとしたその時
親父が財布から渋沢栄一を3名召喚し、場に出した
「お年玉で息子にダイレクトアタックだ」
俺のライフは一撃でゼロになる
まあ、そういうことなら仕方ない
初日の出に付き合ってやるとしよう
たまには親父と2人きりで話すのも悪くないだろうし
俺と親父は手早く支度を済ませると、寒空のもと、日の出スポットへ向かうのだった
……いやでも4日の初日の出ってやっぱり納得いかないな
ま、3万円もらったから、細かいことはもはやどうでもいいけどね
今年の抱負を教えてくれ?
そうですね
無闇に目標を立てないことでしょうか
目標なんて立てたらどうなると思います?
目標を達成しようと、生活が縛られてしまいますよ
特に今年の抱負
新年で調子に乗って、壮大な目標を立てた日にはもう……
目標に振り回されるくらいなら、目標を立てないことを目標とします
え?
それだと目標を立てないことにこだわって、それに振り回される?
確かに
目標を持てばそれに振り回され
目標を持たなければそのこだわりに振り回される
私は、どうすれば……
……いや、そもそも目標を立てないことを目標として掲げるからおかしなことになるんですよ!
真に目標を立てないとは!
目標を立てる立てないにこだわらないことです!
目標を立てようと思ったら立て、立てようと思わなかったら立てない!
そして立てたところで気にしすぎない!
立てなくても気にしない!
真面目にキッチリこなそうとしないことが重要なんじゃないでしょうか!
というわけで、私の今年の抱負でしたよね
特にありません