度々妙な夢を見てるって、言っただろ?
普段の君は研究所で日夜頑張って働いてるよね
でもバリバリに学生をやってる夢を何度も見ている、と
確かに妙だ
ただ、大変申し上げにくいんだけど
……この際だから言うよ
君が見た夢のほうが現実だ
この世界は……君がひととき、現実を忘れて楽しむための世界
仮想空間なんだ
ここにいる間は現実での記憶はないはずだけど、不具合があったみたいだね
夢を見たような感覚で現実の記憶を思い出してしまっている
僕の予想だと、この不具合を放置していると、いずれ現実の記憶をここにいる間でも覚えてしまっている状態になる
そうならないように、メンテナンスとアップデートが必要になるわけだけど……
もちろんその間、君はこの世界へアクセスできない
心の拠り所をひとつ、1ヶ月間ほど失うことになるけど、大丈夫かい?
まあ、その分現実を大事にできるとも言えるから、悪いことばかりじゃないだろうね
でも、不安要素も大きい
この世界での3日間は、現実での1時間
そしてこの世界にいない間は、この世界の時は進まない
だから君は、フラッと気軽にこの世界に来てはもうひとりの自分、もうひとつの人生を楽しんでいた
習慣みたいにね
それが1ヶ月間奪われるんだ
けっこう、つらいと思う
とはいえ、アップデートはしないともっと大変でつらいことになるかもしれない
この世界の不具合拡大とか、存続危機とかね
だから、1ヶ月間のメンテナンスはほぼ確定事項
君が現実でメンテナンスの間どう過ごすかを考えないといけない
現実の記憶が曖昧な今の君に話しても、いまいちピンとこないだろう
というわけで、今から一時的に君の記憶をONに設定するよ
思い出したみたいだね
さあ、時間はまだあるし、現実での生活を考えようか
大丈夫
僕は君をサポートするためにいるのだから
現実での過ごし方も、知恵を出すという形でサポートさせてもらうよ
笑えない冗談だ
他人を見ずに、ひたすら自己中心的に生きてきた俺がピンピンしていて、他人のために奔走し続けたこいつが、不治の病で死へ向かってるなんてな
善行を積んだ報酬がこんな結末だなんて、つくづくこの世は救われないようにできてるとしか思えないぜ
だがまさか、自分勝手な俺が他人に対してこんな感情を抱くとは思わなかったな
こいつは俺のために、もっと人を気にかけろとか、色々言ってくれたからかもしれない
友達と呼べるのは、こいつくらいだしな
とはいえ、俺がしてやれることなんて何もないわけだ
無力感はあるが、しかたないとも思う
やっぱり世の中、自分のために身勝手に生きるほうが幸せなのかもしれねえな
俺が幸せかどうかは……まぁ自分でもよくわからん
ひとつわかるのは、俺にできることが、こいつを見守ることだけってことだ
けどな
自分でもびっくりしたが、代われるもんなら代わってやりたいよ
なんというか、こういう奴が幸せになれない世の中なんて、間違ってると思わないか?
俺は自分の価値が低いとか、こいつよりも下等な存在だなんて思っちゃいない
むしろ、人ってのは価値なんか付けて比較するようなもんじゃねえって考えだ
それでも、自分を犠牲にしてでも、こいつだけは生かしてやりたい
それが心の底から俺が思っている、偽らざる本心だよ
そんなことを考えてたら、頭の中で何かに問いかけられた
俺の命を捧げて、目の前の友を救うか?ってな
悪魔の契約か?
なんて思ったものの、邪悪な感じはしない
誰が、どういうつもりで言ってるのかは知らねえが、こいつを助けられるなら、俺が迷うことはない
とっとと救ってやってくれ
俺は別にいいが、こいつには明日への光を掴み取って欲しい
俺は願う
こいつの命が救われることを
これからも他人のために動くことを
これからは自分自身のことにも目を向けることを
俺の体が軽くなるのを感じる
浮遊感に包まれて、俺は自分の死を悟った
こいつはきっと、俺が死んだら悲しむんだろうな
でも、俺は満足だよ
お前のために命を使えて
だから、気にしないでくれよ
俺がそうしたかっただけなんだからな
お前の働き、これからは遠くから眺めさせてもらうわ
せっかく俺が命をやったんだ
いつまでも元気でな
じゃあな
人が死ぬことを星になるって表現することってあるじゃないですか
だからね、僕は思ったんです
「転生したら星になった件」とか面白いんじゃないかって
主人公は惑星なんですよ
生命が誕生して、知的生命体が現れ、それらの営みを惑星たる主人公が観察していく
そんな物語
でもね、気づいてしまいました
これ主人公何もしてないよね、と
だから主人公の意思の力で、気まぐれにちょっと誰かの手助けをする
そんな内容なら主人公も活躍するし面白いのでは?
と思いつきました
ただそれでも問題はあるわけです
主人公は誰からも認識されないので、影響を与えてるけど完全に孤独な存在になってしまいます
ならばこれならどうでしょう?
主人公は、実態ある幻として人の姿をとって人前に現れることができる
自分の上で生活する人々に対して、謎の存在として交流しながら、自分の価値観の赴くまま、気ままに手を貸すわけです
そして一話完結型みたいな構成で、さらに時系列もバラバラ、時代もバラバラな感じで展開する、という感じ
これは面白そうな雰囲気になった気がしますよ!
ただね
僕には物語を作る能力がないんですよ
……というわけで!
そこのあなた!
僕の代わりにちょっと書いてみませんか!?
興味があったら是非!
なに、他人のアイディアだとか、そんなのを心配することはないですよ
僕にこんなことを言わせてる作者も、完全に読者になる気しかなく、「転生したら星になった件(仮)」の作者になる気なんてものは一切ありません
奴も誰かが書いたと知れば喜んで読みに行きますよ!
問題は誰かが書いたとて、知る術が限られている点ですか
まぁ、興味がなければ何言ってんだこいつと聞き流してください
では、僕はこのへんでおさらばさせていただきますね
バイバーイ
痛みはもう感じない
そして体はやたら軽く
遠い鐘の音が響いて、俺を呼んでいるようだ
これはヤバい
天国が俺を引き寄せているのだろう
お前の命は尽きるから、もう来いと
けど
俺は死ぬわけにはいかない
天に召されてる場合ではないんだよ
地獄へも行かない
地獄送りにされる謂れはないからな
転生?
早すぎる
生まれ変わるには時期尚早だ
だってそうだろう?
俺の旅はまだ終わっちゃいない
いや、まだ始まったかどうかさえ疑わしい
勇者様に仲間にお誘いいただき、故郷を出た翌日にモンスターに致命傷を負わされたのだ
誰だって納得できるわけがないだろう?
こんな状況
俺は納得できない
ただ、この状況を切り抜けて蘇生するには、何か代償が必要だ
鐘の音はだんだん大きなってくる
時間はあまり残されていないな
さて、支払う代償だが
俺は魔道士だ
ならば、魔法を捧げよう
魔道士が魔法を失う
それは相応の代償と言えるはず
大丈夫
俺は魔法だけが武器ではない
勇者様には黙っていたが、俺には生まれつき特殊な力が備わっている
明らかに魔法とは違う原理で発動する能力
例えば、詠唱も杖もなく、念じると離れた所にあるものを自在に動かせたり
また、相手の体に遠くから圧や負荷をかけたり
俺はこれを、超能力と読んでいる
周りに話すと気味悪がられそうだったから、隠してきたけど
彼とその仲間たちなら、きっと俺の超能力を受け入れてくれるだろう
だから、俺は生き返るために魔法を手放す
超能力で勇者様のお役に立つのだ
正直、魔法より超能力のほうが得意で強いし
俺の体から魔力が抜けるのを感じる
感じなくなっていた痛みがだんだん強くなる
体の重みもあり、鐘の音は遠ざかっていった
意識を取り戻すと、勇者様たちが心底安堵した、という表情をしていた
よかった
俺は無事、蘇ることができたのか
今度こそ、旅を始めることができそうだ
スノー?
君はスノーと書いたというのか?
snowを?
スノーと?
そうかそうか
スノーと書いてしまったか
いや、別にいいんだ
書き方は自由だ
スノーと書く者だっているだろう
そう
君は何も間違っちゃいない
なんにもおかしくはないよ
ごく普通の書き方だ
だが、そうか
スノーと書いてしまったんだな
雪といえば様々な遊びがある
雪合戦、雪だるま作り、スノーボード
そして、スキー
スノーの上でスキー
なんだか、似ていていい感じの言葉の組み合わせじゃないか
スノーとスキー
しかし、そうか
君はsnowをスノーと書いてしまったわけだ
いや、気にしないでくれ
悪いことではないよ
悪かろうはずがない
スノーなんて珍しくもないし、変だなんてことは絶対にない
スノーと書いたっていいじゃないか
自信を持っていこう
スノー、スノー、スノー
けどそうか
スノーと書いてしまうタイプか君は
……私はね、snowはスノウと書く派なんだ