だいじなもの
「透明な羽根」
白炎の魔竜から落ちた羽根
手に取ると心を震わすほどの圧を感じる
ゲーム開始時から持ってるアイテム
使いどころが訪れなかったよ
楽しみにしてたんだけどなぁ、白炎の魔竜とのレイドバトル
ストーリーに出てきた時はかっこよかったし、戦う日を考えてワクワクしてたのに
俺は面白いと思ったんだけど、ウケが悪かったか
サービス開始から一年ちょっと
満足いただけるサービスを続けることが困難になったらしく、終了を決定
ここから残りわずかではありますが、完結に向けて色々やるらしい
悲しいなー
なんだかんだ、キャラにも愛着があっただけに
これが俺にとって微妙な出来なら、しょうがないねで済むけど、ハマっちゃったから
ただ、大多数のプレイヤーの感覚とはズレてたんだろうな、この結果を見るに
せめて透明な羽根の伏線を無理矢理にでも消化してほしい
白炎の魔竜かっこいいんだもん
とか言ってたら
戦うことは叶わなかったけど、最終戦で透明な羽根によって白炎の魔竜が馳せ参じ、主人公とともにラスボスと戦う展開になった
かっけー!
まさか味方として共闘してくれるとは思わなかった!
ラスボス戦はイベント戦扱いで、ほぼ勝ちが確定してる内容なんだけどね
それでも
いや、だからこそ白炎の魔竜のかっこよさと熱い展開が成立すると言える
最後の最後にいいもの見せてもらったな
もっと続いていたら白炎の魔竜のかっこいいところ、もっとたくさん見られたんだろうな
でもそんなことを言ってても仕方ない
また面白そうなゲームを探すとしよう
似たような世界観のやつがいいな
しばらくはロスが続きそうだ
灯火を囲んで、みんなで手を繋いで、回る回る
変な言葉を発しながら回る回る
キュインキュインという怪しげな音をスピーカーから流して回る回る
勘弁してくれ
こんなわけのわからない儀式、もう終わらせてくれ
こんなバカみたいなこと、俺はやりたくないんだ
いや、俺だけじゃない
みんな心はひとつのはずだ
本気でやってる奴なんて誰もいないんだ
そして、誰も本気でやってる奴がいるなんて思ってないんだ
ただ、誰も望まない同調圧力に屈せざるを得ない
全員がやめようと言えば、すぐにでもやめられるはず
しかし、ひとりで言うのは勇気が必要になる
たとえ、誰ひとりとして真剣にやっている者がいなくても、だ
誰かがやろうと言い出した
なんでそんなアホなことを言い出したのかは、覚えていない
ただ、全員気がちっちゃく、拒否や否定が苦手な人間だったために、止める者がおらず、結果今に至る
俺もその一人だ
さて、俺たちはここでいったい何をしているのか
それは……UFOを呼ぼうとしているのだ
さっきから回り続けているが、一向にUFOなど現れない
それはそうだ
仮に宇宙人が地球を観察しているとしても、こんな適当に考えた呼び出しで来てくれるはずがない
はたから見たら狂った集団
しかしその実、ただ気が弱くて言い出せない臆病者の集まりだ
ああ、いつまで続くのだろう
この虚しい謎儀式は
夜も遅いし、さっさと帰りたいな
でもこの調子じゃあ今日中には無理だろうな
「冬支度はもう済んでるぜ!」
そう言いながら、彼の服装は半袖短パン
さらに、彼の所有している服も全て半袖短パンのみで構成されている
ではなぜ冬支度が済んでいるなどと、胸を張って、自信満々にいえるのだろうか
その秘密は彼自身の身体にある
膨れ上がった筋肉
彼は、冬に備えて筋トレのメニューを強化していたのだ
それにより筋肉量は増加
肉体は夏場よりも鍛えられたのだ
長袖?
長ズボン?
コート?
マフラー?
カイロ?
そんなものは彼には必要ない
筋肉
筋肉さえあれば、寒さなど感じないのだ
筋肉こそ最強の冬服である
エアコン?
ストーブ?
オイルヒーター?
暖炉?
床暖房?
そんなものは彼には不要だ
筋肉
筋肉さえあれば、暖かさを感じるのだ
筋肉こそ最強の暖房である
来たる冬、どれだけ気温が低くなろうとも
来たる冬、どれほど雨や雪が降ろうとも
彼には文字通り、筋肉がついている
筋肉はいつでも、彼とともにあるのだ
しかしそれとは関係なく、インフルエンザにはかかった
いかに筋肉を鍛えようと、ウイルスには感染するし発症する時は発症するのだ
ザ・ワールドォ時を止めてー♪
ザ・ワールドォ止まれ時よー♪
奴らのぉ旅路をー無駄無駄ァにするためにぃ♪
なんで僕は夜の路上でジョジョの奇妙な冒険を元にしたらしい謎の歌を聴いているんだろう
というかひでえ歌詞だな
ところどころ要素を取り入れてるのはわかるけど、取り入れ方のセンスが皆無だ
これじゃあDIOだってどれだけ清々しい気分でも歌う気起きないよ
僕以外誰も聴いてないし、僕自身だってなんで聴いてるか自分で理解できてないからね
ただものすごく疲れて、少し休みたかったのは確かだ
それにしても、熱く楽しそうに歌ってるなぁ
センスはないけど
観客もほぼいないけど
それでもあんなに爽やかに歌い続けてるってことは、頑張ることに意味を見出だせてるんだろうな、彼らは
僕はなんのために普段頑張ってるか、最近わからないよ
時を止めてずっとゴロゴロしたいくらいには、心が疲労を訴えてる
彼らを見てると涙が出そうだ
僕も前はやる気に満ちて希望を胸に生きてたのにな
他人を眩しく感じるようになっちゃったよ
でも、彼らの眩しさは嫌じゃない
むしろ、目を細めてでも見ていたいな
あそこまで振り切ってると、応援したい気持ちと、僕もまだ現状をなんとかできるんじゃないかって気持ちが湧いてくる
やっぱり勢いって大事だな
勢いは他人も巻き込んで前へ進ませる
僕もそんなふうになれたらいいけどね
前はそういう人間を目指してたんだけど、長らく忘れてたよ
情熱ってやつを
「ありがとうございましたぁ!」
最後の曲が終わったようなので、僕はひとり拍手を送った
君たちは僕みたいにならずに、夢を持ち続けられるといいね
僕ももう少し、何か今をよくすることを探してみるよ
見てごらん、これを
この前撮影されたキンモクセイだよ
漢字で書くと金木星
そう、金星と木星が融合したんだ
金星が地球と火星の軌道を通り過ぎてね
なんでこんなことが起きたのかはわからないし、その上で、地球が平常運転でなんの変化もない理由も不明だ
普通なら太陽系が崩壊か何かすると思うし、少なくとも地球は滅ぶよね
なのに地球に変化なし
それにしても、奇妙な姿になったものだね
木星に風穴が空いて、その中央に金星が座しているなんて
これで終わりならいいんだけど、最近水星と土星も距離を縮めてるんだよ
金星木星といい、いつの間に仲良くなったんだろう
あんなに離れてるのに
頭がおかしくなりそうだけど、地球に影響がないなら、なってしまうものはしょうがないよね
人類には何もできないし、する必要もない
まぁ、この不思議な光景を楽しむくらいならできるんじゃないかな
研究者を始め、宇宙に関わる人たちは頭を抱えてるけど、なぜか地球にとってなんの影響もないことだけは、見た人全員わかるんだよね
君も感じるでしょ?
星が融合しても、なにも心配いらないってことが
心配無用な理由は検討もつかないのにね
とりあえず、金木星を楽しみながら、水星と土星の動向にワクワクしてるよ、私は