友人が、苦労して手に入れたという、星のかけらをプレゼントしてきた
星のかけらとはなんだろう?
隕石か?
たぶん隕石なんだろう
まさか月の石ではあるまい
私は宇宙にそこまで興味はないが、隕石はすごいな
かなり興奮する
高かったのではないかと聞くと、友人は五千円ほどだったと笑いながら言った
安くないか?
しかしなぜ私にこんな貴重なものをプレゼントしようと思ったのだろう?
私が宇宙マニアならわかるが、実際のところ、私の宇宙への興味は人並だ
なにやら怪しさを感じる
この男はいたずら好きで、ジョークなどを頻繁に言ってくるのだ
私は星のかけらをじっと観察した
なんだか、見覚えがあるような
ああ、わかったぞ
友人が持ってきたのは隕石でも月の石でもない、溶岩だ
星のかけら、か
まあ、地球は惑星だし、そこから噴出したものなら、星のかけらと言っても間違いではない
しかし、そんなジョークを言うために五千円かけて溶岩を買うか?
まあ、人を楽しませたがるいい友人であることは間違いないな
ジョーク用に買ったわけだが、プレゼントというのはジョークではないらしく、貰っていいそうなので、ありがたく頂戴することにした
溶岩というのも、珍しくて面白いしな
Ring Ring ...
Ring Ring ...
え、公衆電話が鳴ってる
公衆電話って鳴らないよね?
怖いな
いかにも何かよからぬことが起こりそうだよ
取ってみたい気もあるけど、取らないほうがいいよなー
でもこれ、取らなかったら逆に呪われそうな気もする
せっかくホラー感出して公衆電話鳴らしてんのに無視しやがってみたいな感じで
もう取っちゃうか
少しくらい怪異に付き合うのも悪くない
これも経験だ
もしもし
『お前は許さない』
いや、僕は死者に恨まれるような人生は送ってません
全然覚えがないし
というか、誰なんですか?
名乗るか顔を見せてくれないと仮に僕が何かやっちゃってたとしても、わからないですよ?
声から推測しようにもノイズかかりまくって、辛うじて聞こえるくらいだし
あっ
これもしかして、後ろめたい心が一切ない人のほうが少ないのを利用して、恨んでもいない相手を脅し、雰囲気に飲まれた人に謝らせ、無差別に呪う怨恨詐欺の怪異では!?
呪えば呪うほど力が増すからといって無理やり人を呪い殺そうとし、他の怪異たちからも嫌悪されている、悪質な奴だ!
「少々お待ちください」
そう言って僕は即座にスマホで別の怪異に電話した
こういう、嘘の恨みで無実の人間を呪殺しようとする悪質な怪異を取り締まる、怪異専門の怪異がいるのだ
幸い僕は彼と知り合いなので、取り締まってもらうことにした
【報告、ご苦労】
ひと言、そう告げると、電話が切れた
その後、公衆電話の受話器から、甲高い悲鳴が聞こえた
どうやら、断罪されたらしい
怪異界の秩序は、彼のような怪異たちによって保たれているのだ
少し偉そうに語らせてくれ
追い風に乗じて、大胆に動く
そうすることで、挑戦していることが大きく進展することも多い
だが、追い風は待つだけでは吹いてこない
自分で起こそうとしないと、吹かないんだ
運がよかったとか、周囲の人のおかげとか、確かにその通りではある
だがそれだけじゃない
日頃の努力や行動の積み重ねが、ふとしたきっかけで噛み合った時、追い風は吹く
つまり追い風が吹く時というのは、決してまぐれや偶然ではなく、実力が多く含まれている
それに、いくら追い風が吹いていても、それをものにできるかどうかは、自分次第だろう
絶対にまぐれや、周りの人々の協力だけじゃどうにもならない
最後は、自分がそれを達成できるだけの力を持ってるかどうかだ
お前にとって都合のいい状況が揃っていたのは認めよう
いつもより、相当やりやすかっただろう
しかし俺は、お前の運がよかっただけだとは思わないし、すべてが周囲の人の協力の賜物とも思わない
この追い風は、お前が今まで頑張ってきた結果、掴みとった環境だ
お前が自分で吹かせた追い風なんだから、うまくいったら、自分を褒めてやればいいのさ
そんなに謙遜する必要はないと思うぞ
お前は、周りへの感謝を忘れない優しさがある
けど、その心を少しは自分に向けてやっても悪いことはないんじゃないか?
お前はお前が考えているより、よっぽどすごい人間なんだからな
嫌なことも、難しいことも、不安なことも、辛いことも、君と一緒なら大丈夫
君と一緒にがんばれば、きっと乗り越えられる
私は君に感謝してもしきれない
君のおかげで、私は色々なことを乗り越えられた
自分に自信を持つことができた
君はどうなんだろう?
私は君の力になれているのかな?
苦しい時、悲しい時、逃げ出したい時、泣きたい時、私のことを、一緒なら乗り越えられると思えるくらいの存在だと、君が感じてくれていたらいいな
君と一緒に、お互い助け合いながら、たくさんのことに喜んで、たくさんのことを楽しんで、大変なことも乗り越えていけるような、そんな関係を築けているのなら、とっても嬉しい
そんな関係性を、いつまでも続けていきたい
寒い季節の中にあって、身に刺さる冷たい風も、雨も、凍える雪もない
穏やかで寒さも軽い冬晴れ
そんな日はホッとする
厳しい寒さから一時的にでも抜け出せるから
そして、そういった存在に憧れを抱いている
辛い状態に置かれた人の苦しみを取り除くことが、自分にできるとは思わない
ならば、少しの間だけでも、苦しみを忘れられる時を与えられる人間になりたい
そう思って私は、人々が集まり、お茶やお菓子を食べながら一息つける場を作った
最初はあまり人は来なかったが、少しずつ利用者が集まり始め、交流が増えていく
皆、そこでの交流を楽しんでくれて、私にとってもなくてはならない場所となった
その場所の名前は「冬晴れ」
厳しい寒さに晒された心が、少しの平穏に包まれてくれるのなら、こんなに嬉しいことはない