目の前に天使を名乗る男がいる
なるほど、背中には純白の翼を生やし、
頭には金色の美しい輪が浮いている
男によると、天使が見える人間は
相当低い確率でしかいないのだそうで、
存在自体が奇跡的らしい
前回会ったのは250年前だと言っていた
あまりにも現実離れした光景に私は、
きっと頭が追いつかなかったのだろう
天使を前にくだらないことを考えていた
天使の翼って、
大きさ的に飛べない翼なのではないか?
あれで人サイズの体を飛ばせるとは思えない
超常的存在に対して抱く感想ではないことは
十二分に自覚しているのだが、
なぜか気になって聞いてしまった
結果、驚くべき事実が明らかになった
天使は翼で飛んでいないらしい
ほぼ飾りのようなものだという
実際は体に備わった、
物理法則を無視した能力で飛んでいる
より正確には飛んでいるというより、
浮きながら高速移動しているようだ
天使から面白い話を聞けた
向こうも面白かったようで、
近いうちにまた会いに来てくれるそうだ
まあ、天使の近いうちがどの程度の時間なのか、
そこは気になるところだが
楽しみにしておこう
魔王プラント配下
七つの秋草が一角、群生のススキ
彼は、直属の兵団と共に樹兵アカマツの軍勢を瞬く間に育て上げる能力を持つ
普通ならば敵によってすぐ討ち取られるはずの弱い樹兵でも、ススキの庇護下に入れば大成する可能性が格段に上がる
群生のススキを攻略するためには、樹兵アカマツの軍勢が育つ前に、直属の兵団を素早く殲滅しなければならない
時間をかければかけるほど、こちらが不利になっていく
樹兵アカマツの軍勢が完成してしまえば、勝利は絶望的となるだろう
だが兵団さえ突破することができれば、もはや群生のススキに為す術はない
そうなれば、こちらの圧倒的有利に戦いを進めることができるのだ
いかに素早く攻められるかが、勝利への重要なポイントとなるだろう
脳裏に焼き付いた流行りのあの曲が
全く鳴り止む気配がない
サビの同じフレーズを繰り返し続けている
サビ以外の部分もあるはずなのに
それ単体でループできる作りになっているので
延々とぐるぐる回り続けるのだ
もう疲れたので止まってください
ほんと眠れなくなりそうなので勘弁してください
布団に入ったけど
サビのループで頭が冴えていく
この状態の一番の問題は
流行っているが私は大して好きではなく
別にそんなに聴きたいわけじゃない曲だという点で
つまり長いこと流れていると苦痛になるわけで
頭の中がうるさくて非常に鬱陶しい
脳裏からさっさと去って欲しい
このループはいつ終わるのだろう
ちなみにこの現象には名前があり
イヤーワームというらしい
誰か耳の中の虫を今すぐにでも駆除してくれ
こいつは紛うこと無き害虫だ
意味がないことなどないと人は言う
それは正しいことだろうと思う
一方で、すべての事柄に常に意味があるのか、
と問われれば、
それは間違いなのではないか、とも思える
意味とは、自然に存在するものではなく、
誰かが見出して初めて付加されるのではないか
すべての物事にはもともと意味はないが、
どんな小さなことでも、
人の手によって意味を与えれば、
それは意味のあることなのだと、
そんなふうに思う
きれいな桜の木の下で
あなたとわたしは
花見ではしゃぎすぎて
翌日は動けなくなったけど
楽しかったのでよしとする
モンキーポッドの木の下で
あなたとわたしは
仲良く虫に刺され
地獄を見たけど
結局あとでいい思い出になる
イチョウの木の下で
あなたとわたしは
買ったイベントグッズを確認し合った
ランダムグッズのトレードも成立して
最高にテンションが上がった
大きなケヤキの木の下で
あなたとわたしは
別々の場所へ引っ越すことを告げ
お互い別れを惜しんだけど
また会えるだろうから悲しくはない
きれいな桜の木の下で
あなたとわたしは
お互い地元に戻ってくることになって
久々に会う約束をした
ついでの花見ではしゃぎ過ぎて
翌日は動けなくなったけど
嬉しかったので何も問題はない