【遠くの声】
私を呼ぶ声がする
それは 私の大好きな
あの人の声
好きでいるのはやめたと言うのに
君は私の気も知らないで
私を呼んでいるんだろう
今でも揺れ続けている
感情に線引きをして
『好き』を抑えるよりも
そのままがいいんじゃないか
伝えてはならないのは
分かっている
それでもまだ 君が好き
君に伝えられない感情を
大空に叫びたい
届かなかったとしても
それでもいい
感情は感情のまま
あるがままで
私は私のまま
彼は彼のままで
それでいい
君の呼ぶ声を
ただ 愛おしく想う
届かない想いであっても
君が幸せでいるなら
それでいいんだ
【ひとひら】
私は泣きながら
君に背を向けた
未練がないわけではない
ここで咲いてはいけないと
胸騒ぎがしたから
走って遠ざかった
せめて ひとひら
愛した証を置いていきたい
願わくば
君の記憶の片隅に
残っていたい
そして私は
この春に誓う
また咲くことを
唇を噛み締め
雨を待った
【風景】
今日という日を
心待ちにしていた
棘だらけの景色を
切り裂いて描いた
新たな風景
これは私の世界
芳しい
美しい
自由である
そんな私を始める
思い立ったが吉日
この世界は
私が彩ると決めた
東に照準合わせて
希望に胸を膨らませ
新たな世界へ
【フラワー】
私の胸には
花が咲いている
貴方を想って
佇んでいた
枯れてしまう前に
渡したいのに
貴方の手には
すでに大きな花束
実りのない恋だと
わかっている
それでも渡したくて
涙を拭いながら
貴方を見つめることしか
できなかった
諦めてしまった花も
そこにあるだけで
美しくて価値があるなら
この想いさえ
無駄ではないだろう
【好きだよ】
言えたなら楽になるだろうか
喉まで出かかってるのに
いつだってそれが言えない
道路脇でバーの明かりに
二人照らされながら
隣に座っていた
マイノリティな僕らが
普通のように錯覚させてくれる
新宿2丁目は仄暗いのに温かい
短くなった爪にピンキーリング
もう少しで手が触れ合いそう
失うことに慣れたと思ったのに
君を失うことが何より怖い
君がタバコを咥えるから
僕はライターを持つ手を伸ばして
火を差し出した
『好きだよ』
君は目を見開いて咽せた
それを笑う二人
君はタバコの火を消して
僕らは笑いながら抱きしめあった
怖いなりに弱いなりに
君といたいな
僕は、君が好き