ー手のひらの宇宙ー
指先の感触を愛でるよう、そっと丁寧に触れると、優しさという宇宙が私の心を駆け巡る。
それは日常のさり気ない瞬間。
朝の冷たい水が肌に触れる時、観葉植物に触れる時、寝る前の柔らかな布団に触れた時。
そして、あなたにそっと触れた時。
この感触は、感覚は、私だけの小宇宙のようだ。
誰にも奪えない、奪われない、かけがえないもの。
どうか、なくさないように握りしめていて。
ーそっとー
涙が流れた。
星空が美しくて、君を思い出すから。
叶わない、手が届かないと知ったから。
冬の風に吹かれて、冷たく濡れた頬を、
静かな夜だけが、そっと包んでくれた。
ー星のかけらー
夜空に浮かぶ星々は、命を燃やして輝く。
星々が瞬く間に弾け飛んで、キラキラと音を奏でている。
さぁ、星のかけらを、拾い集める旅に出かけよう。
両手のひらから零れんばかりの星のかけらを集めるんだ。
そして、その星のかけらをこの胸に美しく飾ろう。
いつか、その輝きを手放すその瞬間まで。
ー追い風ー
穏やかな冬の青空。
瞼の奥に焼きつくような、柔らかで眩い日差しが降り注ぐ。
冬の風が私の背中を押して、枯れ葉が軽やかに舞い上がった。
サラサラと音を立てながら、枯れ葉は空中で踊り出す。
それはまるで、この世界から贈られた祝福のようで、不思議な心地よさが胸に広がる。
風で乱れた髪を指先で整えながら、少し先の未来を見据える。
不安も悩みも尽きないけれど、風のように軽やかに自由でいれたなら、私はきっとどこへでもいけるだろう。
背中をそっと押す風に包まれながら、心がふっと軽くなった。
背中の風に導かれるまま、また一歩、私の未来を踏みしめた。
ー新年ー
『新年、明けましておめでとう。』
この言葉の温かさを、今、改めて感じている。
大切な家族を失うことなく、新たな一年を迎えられたからこそ、伝えられる言葉だということ。
こんなに素晴らしいことはない。
歳を重ねるほど失うことも増えてくる。
その実感があるからこそ、この言葉の重みを感じる。
私は、このありふれた日常が、涙が出るほどに幸せだ。
どうかこの有り難みを忘れずに、今年も生きていきたい。