私は、私の脳を鋭利に抽出する言葉を探している
臓腑を的確に抉り出すような、手術台上のメスのような言葉
スパッと頭を切り刻むような鋭い銀色が欲しい
それは大衆的であってはならぬ
それは曖昧蒙古であってはならぬ
こいつが切るのは生身の感情だ
だから血肉で錆びるなまくらでは駄目だ
脂で切れ味の鈍るなまくらでは駄目だ
欲するのは煉獄の炎で叩かれあげたような名刀だ
しかしそれは妖刀の域にある
ならば使い手にも相応の腕がいる
いくら掌中の銀色が豪物であろうと
使い手の私が味噌っかすでは話にならぬ
故に私は私の脳を抉り、言葉にする
脂肪の詰まった臓物で試し斬りをする
それしか道はないのだ
抽象的事物を活字に記すには
それしか道はないのだ
2024 2/12(日) 18『この場所で』
父が母に花束を渡した。
両手で抱えるくらい大きな花束だった。
あいにく母は花の扱い方が苦手だから、その花束は少しすると枯れて茶色の草木になってしまった。
「これでいいのよ」
母は言った。
「毎年毎年、あの人が贈ってくれるんだから。」
だから、増えすぎると困るでしょ?と言う。
毎年毎年贈られる花束は、大掃除の時に懐かしみながら袋に詰められる。
少し、慢心しすぎだと思う。
でも、それが愛なんだろうか。
だって、父は母の言う通り、毎年花束を抱えて帰宅するのだから。
私は言葉を呑み込んでポテチの袋を開けた。
クシャ、とあの枯れた花束と同じ音がした。
2024 2/10(土) 17『花束』
不肖ながら、この題を天使の羽に捧ぐ
2024 2/5(月) 16『Kiss』
機械の口約束、
旧モデルの解体、
来世紀後のバックアップ。
劣化する絵の具、
骨のない感情の死骸、
額縁の中の延長戦。
俺の好きな曲、2つ。
2024 2/3 (土) 15『1000年先も』
よく名前は聞く
だけど見た目は知らない
私は花に詳しくないから、
先輩がよく歌ってるあの歌のことかなって思ったよ
私は先輩の歌声をたぶん覚えてるけど、検索して見つけたあなたたちの小さな青い花びらをずっとは覚えてられない
勿忘の文字列に、もうとっくに別の、先輩が真っ青なライブハウスで歌ったあの光景が焼きついてるの
ごめんね
あなたたちにとって1番酷い話だよね
忘れていいよ
2024 2/2(金) 14『勿忘草(わすれなぐさ)』