七紫

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7/2/2023, 11:21:20 AM

『牢獄日没』

日差しが道路や壁を暑く照りつける頃。
僕は一人、暗闇の牢獄に閉じこもっていた。

ドンドンと扉を叩く音が聞こえ、僕は返事をせずに黙っている。
バンッと扉を勢いよく開ける音が聞こえ、「返事をしないやつは蹴るぞ!」と僕に暴力宣言をするこいつは、僕を地下に監禁している叔父。

二年前まで、両親が居たが、事故により他界。
それから僕を嫌っていた叔父に引き取られ、外に出ることを禁止されて、今に至る。
このように、叔父は僕のことをとてつもなく嫌っている。

「返事しろやボケナスがぁ!」とその他諸々の罵詈雑言。
大の大人がこんなことをしていて楽しいのだろうか。

僕の年齢は現在17歳。15の時から身長は一切伸びておらず、体重も減り続けるばかり。
一時期、まともな料理を食べさせてもらっていたが、それは表向きだったことを後々知る。

【表向き】。この理由は、叔父は芸能界を支えるベテランで、"弟夫婦を亡くして甥っ子を育てる心の優しい人"を演じるため。
叔父からしたら、僕はただの営業道具でしかないんだ。元々嫌いだったから余計だろう。

そのあとすぐ密着が終われば、地下に戻ってストレス発散の道具として扱われる。

助けてくれとも頼む相手もいないし、外の様子は上の方に小さくある縦横10cmの小窓だけからしか見えない。
叔父が世間からどう思われてるかも、僕が"叔父に助けてもらった弟夫婦の息子"というレッテルを貼られているのかも、僕は何も、何も知らない。

あぁ、またこんな惨めな考えをしていれば、日が沈む。
今日もまた殴られ蹴られただけだ。
料理なんてここ一週間ほど口にしていない。


俺は日没が嫌いだ。
日が沈んだらまた違う日が来て、あいつに殴られ蹴られる。
僕にいいことなんて、幸福なんてひとつもないんだ。
生まれたからいいことなんて、なにもないんだ。
ただ僕は、毎日あいつに殴られるためだけに生きている。




79テーマ【日差し】

7/1/2023, 11:33:51 AM

窓越しに見えるのは、遠くの丘に一人咲く、一本のひまわり。
鏡越しに見えるのは、優しく笑う君の顔。
友達越しに見えるのは、楽しそうに話している、君と男子。
カメラ越しに見えるのは、雨上がりに薄らと虹が架かった空と、その下でブランコをゆっくりと漕ぐ君の背中。
廊下越しに見えるのは、帰り道一緒に帰ろうと約束をしている、君と友達。

メガネ越しに見える君の笑った顔が大好きで、メガネを取ると曖昧になってしまう僕の目が嫌いだ。




(何を書きたかったか自分でも分かってません)

78テーマ【窓越しに見えるのは】

6/30/2023, 11:15:03 AM

赤い糸は死に際の糸。
白い糸は結ばれる糸。
青い糸は悲しみの糸。
黒い糸は暗黒の糸。
黄色い糸は明るき糸。

こう教えてくれたのは貴方だった。
一年前、青と赤の糸が玄関の取っ手に括りつけてあった。
家中、家の外、思いつく場所に、あなたを探しに行った。
でもあなたは何処にもいなかった。

一年経った現在、近くの山で遺体が見つかった。
雑木林に囲まれた池の近くだった。
貴方がいつも来ていた服と、黄色と白のお守り。
人目で貴方だとわかった。
黄色と白のお守りを作られるのは珍しいから、貴方と私だけの秘密として、貴方に渡したものだった。

なぜ貴方はあの場所で、私達が婚約を結んだあの場所で、。
なにがあったの?なにが起こったの?
真相は闇の中で、一年も前のことだから、痕跡も、足跡も、なにも出てこない。

貴方は何も話してくれなかった。
貴方ともっと思い出を作りたかった。
話したかった。出かけたかった。

もうこの声は、貴方に届くことはない。



77テーマ【赤い糸】

6/28/2023, 12:40:07 PM

夏。
夏が来る。
夕立やそのあとの夏っぽい空。
夏の雲。夏の色。夏の匂い。
夏の匂いがすれば、そろそろ台風がやって来る。
夏の色を見れば、幸せな楽しい青春が訪れる。
夏の雲を見れば、蒸し暑く感じる。

夏を感じる日はいつか来る。
人の心にはいつまでも夏の記憶は残る。
夏は、人々にとって、最高の季節らしい。



76テーマ【夏】

6/27/2023, 10:31:23 AM

ここではないどこか

私の息子は「ここではないどこか」に、
身を潜めて隠れています。夫の暴力により、
息子を隠さなければならなくなりました。
あの子に危害は加えたくない。
そこで私は逃亡を決意しました。


どこかではないここ
ぼくのおかあさんは、
「どこかではないここ」にいます。
ぼくはまいにち、おとうさんとおかあさんが、
けんかしているところをみてます。
おかあさんはくるしそうで、
でも、ぼくをまもってくれます。
だけど、おかあさんがないているところをみたくありません。
だから、ぼくは、おかあさんとおそとにでることにしました。


「 おかあさん! 」
「 おそと、でよ? 」
「 う、うん…。 」


75テーマ【ここではないどこか】

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