『牢獄日没』
日差しが道路や壁を暑く照りつける頃。
僕は一人、暗闇の牢獄に閉じこもっていた。
ドンドンと扉を叩く音が聞こえ、僕は返事をせずに黙っている。
バンッと扉を勢いよく開ける音が聞こえ、「返事をしないやつは蹴るぞ!」と僕に暴力宣言をするこいつは、僕を地下に監禁している叔父。
二年前まで、両親が居たが、事故により他界。
それから僕を嫌っていた叔父に引き取られ、外に出ることを禁止されて、今に至る。
このように、叔父は僕のことをとてつもなく嫌っている。
「返事しろやボケナスがぁ!」とその他諸々の罵詈雑言。
大の大人がこんなことをしていて楽しいのだろうか。
僕の年齢は現在17歳。15の時から身長は一切伸びておらず、体重も減り続けるばかり。
一時期、まともな料理を食べさせてもらっていたが、それは表向きだったことを後々知る。
【表向き】。この理由は、叔父は芸能界を支えるベテランで、"弟夫婦を亡くして甥っ子を育てる心の優しい人"を演じるため。
叔父からしたら、僕はただの営業道具でしかないんだ。元々嫌いだったから余計だろう。
そのあとすぐ密着が終われば、地下に戻ってストレス発散の道具として扱われる。
助けてくれとも頼む相手もいないし、外の様子は上の方に小さくある縦横10cmの小窓だけからしか見えない。
叔父が世間からどう思われてるかも、僕が"叔父に助けてもらった弟夫婦の息子"というレッテルを貼られているのかも、僕は何も、何も知らない。
あぁ、またこんな惨めな考えをしていれば、日が沈む。
今日もまた殴られ蹴られただけだ。
料理なんてここ一週間ほど口にしていない。
俺は日没が嫌いだ。
日が沈んだらまた違う日が来て、あいつに殴られ蹴られる。
僕にいいことなんて、幸福なんてひとつもないんだ。
生まれたからいいことなんて、なにもないんだ。
ただ僕は、毎日あいつに殴られるためだけに生きている。
79テーマ【日差し】
7/2/2023, 11:21:20 AM