星空の下で、彼女に出会った。
彼女が緩やかに笑みを浮かべ、僕を見るから。
僕は、その微笑みに目を奪われてしまった。
星が全て霞んで見える中で、彼女だけが輝いている。
鼓動が速くなる。緊張で上手く声が出ない。
あの、と振り絞った声は彼女に届かず消えてしまった。
彼女がゆっくりと、僕に向かって手を伸ばす。
まるで僕を招くかのように。
誘い込まれた僕は、おぼつかない足取りで君に近づく。
そうして彼女に手が届きそうになった時、
彼女は輝きだけを残して消えてしまった。
小さな星の欠片だけが、足元に残っていた。
きっと彼女は、落ちた流れ星だったのだ。
だから、星の欠片を拾って、集めて。
あるいは同じ場所に行ったら。
再び彼女に会うことができるだろうか。
その輝きに彼女を重ねながら、
今日も星を探して歩き続ける。
願うのならば、1つだけ。
どうかあなたの旅路が、良いものでありますように。
ずっと一緒にいたいと、君が言う。
僕と共にいても、良いことなんてひとつもないのに。
君に茨の道を歩んでほしくないから、
君だけでも幸せになってほしいから。
一緒には行けないよと、君の手を振り払う。
君の隣にふさわしいのは僕じゃない。
だからどうか、そんな泣きそうな顔をしないで。
どうか、幸せに
あんなに必死になってここまで来たのに、
こんなところで終わりが来るなんて。
努力が足りなかったのか、
そもそも努力が報われることなんてなかったのか。
私の旅路はここで終わる。
今までの全部、ぜんぶ無駄になってしまった。
バカみたい。
私が成したことなんて、何の意味もなかったのよ。
――本当に?
本当に、意味なんてなかったの?
ああ、そうだ。
あの人に出逢えたことだけは、
意味があったのかもしれない。
きっと私を、美しい幕引きで終わらせてくれるから。
最後に、あの人に会いに行こう。
――叶わぬ恋と、私自身を終わらせるために。
遠い遠い土地で、君と僕の二人きり。
ここでは僕らのことを知っている人なんていないから、
二人ぼっちだね、と君は笑った。
寂しくないの、と聞いてみても、
あなたがいるから大丈夫だよ、と君は微笑む。
だけど僕は知っている。
君が、時々寂しそうな目をして遠くを見ていることを。
それを目にする度に、僕の心はチクリと痛む。
僕のわがままで君をこんなところに連れてきてしまったのに。
君は文句のひとつも言わずに、僕に笑いかけてくれている。
あなたが気にする必要はないの、
自分で決めてここに来たんだから。
だからほら、そんな泣きそうな顔をしないで。
投げかけられた優しい言葉と、君の温もりに身を委ねる。
ああ、君がこうやって甘やかすから。
僕の選択は間違っていなかったんだと、思ってしまう。
遠い遠い土地で、二人ぼっち。
故郷を捨て、二人だけで生きていく。