ずっと一緒にいたいと、君が言う。
僕と共にいても、良いことなんてひとつもないのに。
君に茨の道を歩んでほしくないから、
君だけでも幸せになってほしいから。
一緒には行けないよと、君の手を振り払う。
君の隣にふさわしいのは僕じゃない。
だからどうか、そんな泣きそうな顔をしないで。
どうか、幸せに
あんなに必死になってここまで来たのに、
こんなところで終わりが来るなんて。
努力が足りなかったのか、
そもそも努力が報われることなんてなかったのか。
私の旅路はここで終わる。
今までの全部、ぜんぶ無駄になってしまった。
バカみたい。
私が成したことなんて、何の意味もなかったのよ。
――本当に?
本当に、意味なんてなかったの?
ああ、そうだ。
あの人に出逢えたことだけは、
意味があったのかもしれない。
きっと私を、美しい幕引きで終わらせてくれるから。
最後に、あの人に会いに行こう。
――叶わぬ恋と、私自身を終わらせるために。
遠い遠い土地で、君と僕の二人きり。
ここでは僕らのことを知っている人なんていないから、
二人ぼっちだね、と君は笑った。
寂しくないの、と聞いてみても、
あなたがいるから大丈夫だよ、と君は微笑む。
だけど僕は知っている。
君が、時々寂しそうな目をして遠くを見ていることを。
それを目にする度に、僕の心はチクリと痛む。
僕のわがままで君をこんなところに連れてきてしまったのに。
君は文句のひとつも言わずに、僕に笑いかけてくれている。
あなたが気にする必要はないの、
自分で決めてここに来たんだから。
だからほら、そんな泣きそうな顔をしないで。
投げかけられた優しい言葉と、君の温もりに身を委ねる。
ああ、君がこうやって甘やかすから。
僕の選択は間違っていなかったんだと、思ってしまう。
遠い遠い土地で、二人ぼっち。
故郷を捨て、二人だけで生きていく。
あなたに会う夢を見た。
夢の中のあなたは、あの頃の姿のまま、
あの頃と変わらない笑みを浮かべていて。
それがとても嬉しくて、
どうしようもなく寂しくて。
夢だと気づいているけれど、
手が届かないとわかっているけれど、
手を伸ばすのを止められない。
なんて優しくて、残酷な夢。
せめて、夢が醒める前に、一言だけ。
また会いましょうと伝えたら。
またね、と懐かしい声が聞こえた気がした。
奇跡によって世界は救われた。
だけど、奇跡を起こしたあの人は、
私たちの元には戻ってこなかった。
奇跡の代償だとか、
全てを懸けて世界を守ったのだとか、
もっともらしい理由を考えたけれど、
それでも納得することができず。
あの人のいない世界なんて、と
零れ出そうになった言葉を慌てて呑み込んだ。
それを言ってしまったら、奇跡を、あの人を否定することになってしまう。
それだけは嫌だった。
何事もなかったかのように続く世界を、
今日も私たちは生きていく。
だけど、あの人から未来を奪った不条理を、
忘れることはないだろう。