奇跡によって世界は救われた。
だけど、奇跡を起こしたあの人は、
私たちの元には戻ってこなかった。
奇跡の代償だとか、
全てを懸けて世界を守ったのだとか、
もっともらしい理由を考えたけれど、
それでも納得することができず。
あの人のいない世界なんて、と
零れ出そうになった言葉を慌てて呑み込んだ。
それを言ってしまったら、奇跡を、あの人を否定することになってしまう。
それだけは嫌だった。
何事もなかったかのように続く世界を、
今日も私たちは生きていく。
だけど、あの人から未来を奪った不条理を、
忘れることはないだろう。
3/19/2024, 2:00:40 AM