クリスマスの過ごし方
聖なる夜は、すぐやってきた
ゆっくりゆっくり、その時を待ちわびたかったのに
毎日が慌ただしくて、気がついたら、夜になっていた
ここ10年くらい、常に、記憶の輪郭がぼんやりしている
最高のクリスマスの過ごし方なら、
去年まで毎年、記録更新していた
数週間前から大きなクリスマスツリーを家族で飾り付け、
プレゼントをあれこれ悩んで選び、
当日、テーブルには母の手料理が並んで
クリスマスソングを聴きながら乾杯
いつも両親と妹がいた
そして5年前から、猫もいた
正直、話した内容や、もらったプレゼント、お料理の内容なんかはっきりとは覚えていないけど……
ただ楽しくて、幸せだったということだけは覚えている
今年も、そうでありたいと思っていた
しかし去年までと違うのは、
結婚して出ていった妹がいないこと
そして私の娘がいること
首の座らない娘にとってはじめてのクリスマス
プレゼントは、絵本にした
けど、ラッピングする暇がなかった
本屋さんに頼めばよかったと
後悔しながら、サンタのコスプレをさせる
ニコニコと機嫌よく笑う娘
夕方、両親に娘をみてもらう間に
とにかく爆速で料理をこさえて食卓に着くと
久しぶりのワインで乾杯
そして聖なる夜は、あっという間に過ぎ去ってしまった
しあわせを配り終えた ちびサンタが、すやすや寝ている
おやすみなさい
家族がくれた、クリスマスの幸せな記憶たち
今度から、私があなたにあげる番なんだね
心と心
夫とは通いあっていた時もあったのかも
今はもう興味すらない
なるべく一緒に過ごさないように
食事や就寝時間が重ならないように暮らしてる
こんな日が来るなんてね
うすうす、わかっていたけどね
もう一度通いあうなんて無理でも、
認めあって暮らすくらいにはならないと
いけないのかも
でも気持ちが全然向かない
離れていって、どう戻ったらいいかわからないし
戻りたくもない
引き寄せられたのも、離れてくのも、あっという間
ほんの些細なきっかけの積み重ねだと思う
心が通じあえたらいいな、と思うのは
実家で飼っている5歳のメス猫だけ
今から、そっちに行くね!
午後、お庭で一緒に遊ぼうね!
って、時々、猫にLINEしそうになるけど
LINEのトーク画面を開いて気がつく
スマホも、もちろんアカウントも持ってない!
猫語は上達しない
そもそもウチの猫はあまりしゃべらない
言葉以外に、心を通わせる方法は
猫がよく知ってるはず
私にも、ヒゲやシッポがあったなら……
そして、たくさん一緒に過ごすことができたなら
何でもないフリ
なんて、いつも
部屋の片隅で
一日の終わりに
たった数分の一人の時間を楽しむ
乱雑なダイニングテーブルで
食事をしながら
お気に入りのドラマを観て
家計簿をつける
撮りためた写真を見返して
郵便物を確認して
ネットスーパーを頼む
こうして時間があれば、ここへ思いの丈を書きなぐる
我に返ると、昼間、歌い聞かせた童謡が
壊れたオーディオのように
頭の中で無限リピート再生
こんなことが唯一の自分の時間
たったこれだけで
明日も向き合ってく
何もかも、なかったかのように
誰も、私以外いないかのように
笑い声も泣き声も消えた部屋の片隅で
キャンドル
ゆらゆら
蜜蝋がじわりと垂れる
小さな炎は頼りないが
灯りの演出家
空が赤く染まり始めてから
ゆっくりと
時を溶かす
じんわりと溶けてく様を、夜明けまで
一晩中、眺めていようか