#梅雨
ビニール傘の下、優しい温もり
二人で歩いたいつもの道
この時間が続くように、空に願った
雨よ止むなと
鈍色の空の下、悲しい冷たさ
一人で歩く夜の道
この涙さえも消してしまえと、空に願った
雨よ止むなと
#無垢
君を真っ白なキャンバスとするならば
きっと僕は真っ黒な絵の具だろう
純白で美しい君は、けがれを知らない
まだ何色にも染まっていないのだから
だから君を僕の色に染めて
僕だけのものにしたい
一度黒を塗ってしまえば、
もう何色を塗ったって無意味なのだから
だから今日こそは_
必死で追いかける僕を見て、
君は少し向こうで笑っていた
君は天使だろう?
それじゃあまるで小悪魔じゃないか
悪魔の僕は、天使の君に恋をした。
#終わりなき旅
人生は旅だ
スタート地点に立った瞬間は
行き着く場所はわからない
一人一人、歩くペースは違うけれど
一歩一歩、確実に歩んでいくことで
素晴らしい未来が視えてくるはずだ
ただ、ゴールに着くまでには
絶対に何かしらの障壁にぶつかる
大きなものかもしれない
小さなものかもしれない
しかし無理に乗り越えようとしなくても大丈夫だ
車で遠出する際にサービスエリアに寄るように
旅の途中に、いくら休息を取ったって問題ないのだ
一度止まって辺りを見回してみる
それだけでも少し違った景色になる
障壁を破壊する方法だって見つかるかもしれない
旅をしていると様々な仲間に会うこともあるだろう
一緒に旅をしてくれる人
行く先を先導してくれる人
遠くで見守ってくれる人
だからそれらの出会いを決して無駄にはしないでほしい
私は時々、旅の終着点につくのが怖いと思う
すなわち旅の終わりだ
人生を旅とするならば、やはり終着点は“死”だろうか
歩いて歩いて、やっと着いたと
達成感を感じる人もいれば
あぁ、終わってしまったと
悲しむ人もいるだろう
終着点に着いて「あの時こうしておけば…」
と後悔をしたくないのなら
今の旅の道中を思い切り楽しむのだ
そうすればきっと、現在のことで精一杯で
その先のことなど忘れてしまうだろう
ただこれだけは忘れないでほしい
この『旅』は二度とできないのだ
途中で自ら道を断つことは楽になる近道かもしれない
しかし、旅に寄り添ってくれた仲間,
旅の刺激となってくれた障壁,そして
その先で待っている終着点
みんな大切なもの
取り戻せないもの
旅は孤独なものじゃない
“Life is travel”
#「ごめんね」
料理が下手で、よくお弁当のおかずを焦がしちゃって
ごめんね
裁縫か苦手で、取れたシャツのボタンも縫い直せないで
ごめんね
不器用な性格で、励ましの言葉が見つからなくて
ごめんね
最後まで、大好きなあなたを守れなくて
ごめんね
明日の準備をしている娘がそこにいた
ガサゴソと時折バックを整理する音が聞こえた
本当に、この子はしっかりしている
私とは大違いだ
遺影の中の自分は、精一杯の笑顔で映っていた
私は、自然に笑うこともできていなかったのか
私は娘の頭を撫でた
この感触があなたに伝わることはないけれど
「…ごめんね」
すると娘はゆっくりとこちらに振り向いた
私の姿はもう見えないはずなのに
確かに目が合った気がした
『もう謝らないで』
いつもの優しい声が聞こえた
そしてその顔には笑みが浮かんでいた
驚いて娘の顔を見返したが、
彼女は何事もなかったかのように準備に戻ってしまった
私は今まで、死んでしまったら謝ることしかできないと
思っていた
生きていない以上、何も償えないからだ
でも、それ以外にも言えることはたくさんある
今まで笑わせてくれて
失敗しても大丈夫だよと言ってくれて
ずっと隣にいてくれて
そしてなにより、
私を“母親”にしてくれて
「ありがとう」
“月が綺麗ですね”
英文『I love you. 』を夏目漱石はこう訳したらしい
“好き” とストレートに伝えるのも素敵だけど
たまにはこうやって遠回しに伝えるのも悪くないかもね
鈍感なあなたは、なかなか気づいてくれないけれど
それでもいい
いつ気づいてくれるんだろうと待ってる時間も
とても幸せだから
だからせめて、この言葉が忘れられてしまわぬように
今日も私は月に願う
#月に願いを