彼岸花

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#「ごめんね」

料理が下手で、よくお弁当のおかずを焦がしちゃって
ごめんね

裁縫か苦手で、取れたシャツのボタンも縫い直せないで
ごめんね

不器用な性格で、励ましの言葉が見つからなくて
ごめんね

最後まで、大好きなあなたを守れなくて
ごめんね

明日の準備をしている娘がそこにいた
ガサゴソと時折バックを整理する音が聞こえた

本当に、この子はしっかりしている
私とは大違いだ

遺影の中の自分は、精一杯の笑顔で映っていた
私は、自然に笑うこともできていなかったのか

私は娘の頭を撫でた
この感触があなたに伝わることはないけれど

「…ごめんね」

すると娘はゆっくりとこちらに振り向いた
私の姿はもう見えないはずなのに
確かに目が合った気がした

『もう謝らないで』

いつもの優しい声が聞こえた
そしてその顔には笑みが浮かんでいた

驚いて娘の顔を見返したが、
彼女は何事もなかったかのように準備に戻ってしまった

私は今まで、死んでしまったら謝ることしかできないと
思っていた
生きていない以上、何も償えないからだ

でも、それ以外にも言えることはたくさんある

今まで笑わせてくれて
失敗しても大丈夫だよと言ってくれて
ずっと隣にいてくれて

そしてなにより、
私を“母親”にしてくれて

「ありがとう」

5/29/2024, 10:42:00 AM