夢が醒める前に
今日もまた、あなたの夢を見てしまった
“愛してるよ”
偽りの愛を呟いて、私を抱きしめる
本当は振り払いたいのに
馴れ馴れしくしないでって言いたいのに
あなたに身をまかせてしまう
激流に呑まれた小魚のように
どうしても逆らえない
そして突然彼は消える
それが夢の終わり
寂しいと思ってしまうのは
あなたと出会ってしまったから
胸が高鳴る
君を見ると
いつも胸がドキドキ
胸が高鳴る
髪に触れると
いつも心臓がバクバク
胸が高鳴る
脳裏に残った“ごめんね”の一言
胸にドクンッという大きな刺激
だんだんと赤く染まっていく胸元
ぼやけていく視界
もう胸は高鳴らないよ
怖がり
僕はいつも逃げている
他の人には見えない“ナニカ”から
お父さんは「何も見えない」と言う
お母さんも「怖がらなくて大丈夫よ」と言う
確かに悪いおばけではなさそうだ
だけど、いつかの夜
布団に入って天井を眺めていると
突然、ナニカが僕の目の前にいたんだ
僕は襲われると思って目をギュッと瞑ったけど
何にもされなかった
そのかわりに声が聞こえたんだ
“おやすみ”って
何だか聞いたことのある声
昔、お星様になったおじいちゃんの声に似てた気がする
星が溢れる
透明な袋に星を詰め、
赤いリボンで結んだ
カラフルなこの星々は
全部、私の想い
翌日、それを彼に渡した
彼はとても嬉しそうだった
でも本当は気づいてほしいな
私の想いに
公園のベンチに座って
一緒に食べた
星は口の中で優しく溶けていった
子供の頃から大好きだった星を
いつか大好きな人に贈りたいと思っていた
でも実際は星は手に入らない
だから星に似た金平糖を贈ったんだ
金平糖は長く楽しめるから
“末永く幸せに”
という意味があるらしい
また、赤色のリボンは
“情熱” “愛情”
などの意味もある
だからこれは、愛のメッセージなの
彼は鈍感だけど
私の想い、ちゃんと伝わってるといいな
ずっと隣で
「ずっと隣で私を守ってね」
「当たり前だろう」
夕日に照らされた帰り道
2人で手を繋いで歩いた
一ヶ月後、あなたは消えてしまった
最後に言われた言葉、今でもはっきりと思い出せる
「約束、守れなくてごめん」
ずっと一緒にいられるなんてありえない
そう思っていたけれど、やっぱり辛い
あなたと撮った写真を何度も何度も眺めながら泣いた
あれから二年
今日は雲一つない晴天だ
まだ、あなたの姿が、声が、脳裏から離れない
空を眺めながら歩いていると近くでブレーキ音がした
キキーッ
私の目の前に黒い車が止まっていた
あと何センチかでぶつかっていただろう
車の運転手と謝り合いながら別れた
私の心臓はまだ激しく動いていた
死に直面しかけたのだから当たり前か
当たり前…
そういえば、あの人も同じことを言っていたな
もしかして、今事故に遭わなかったのは
あの人のおかげなのかもしれない
あの人が、私を守ってくれた
これから先もずっとあなたの姿は見えない
でも、本当は見守ってくれてるんだよね
天国で
あなたが亡くなる前に言った言葉は間違いだよ
約束なんて破ってない
今もこうやって、私を見守ってくれてるんだから
“ありがとう、おじいちゃん”