紗夢(シャム)

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3/21/2023, 3:59:25 PM

【二人ぼっち】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】

3/21 AM 10:30

「雪山で遭難して、偶然見つけた
 小屋とかで、人肌で温めあう
 シチュエーションって、
 萌えるけど危機感もスゴいよね」
「なんでそんなことになったのよ」
「わかんない! 何しろ夢だから、
 シーン同士がちゃんと繋がってなくて」

 暁が、今朝見たという夢の内容を
 宵に語っている。
『なんか楽しい夢見た!』と思って、
 起きてすぐ、急いで覚えていることだけ
 スマホのメモアプリに打ち込んだらしい。

「遭難だと、二人きり、って言うより、
 二人ぼっち、って感じだよね。
 不安が押し寄せるっていうか」
「まぁ……命の危機だから、暁みたいに
 ときめいてる場合じゃないとは思うけど」
「大正浪漫から始まったのに、最後の方
 まさか雪山遭難することになるなんて、
 自分の夢ながらびっくりだよ」
「支離滅裂だからこそ、夢らしいけどね」

3/21/2023, 7:38:58 AM

【夢が醒める前に】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】

3/21 AM ?:??

 (……あ、これ、夢だ)

 晴れた空の下。
 わたしは川沿いの桜並木の側を
 歩いている。
 矢羽柄の着物に緋色の袴、
 足元は編み上げブーツ。
 後頭部には大きなリボン。

 (うぅ~ん、大正浪漫! って感じ)

 そんな女学生風装いの自分を
 もう1人のわたしが俯瞰で見つめていて。
 だからきっと、これは夢を見て
 いるんだと思う。
 
 (夢って自分でコントロール
  出来ないよねぇ……)

 せっかくこんな素敵な世界観の夢を
 見ているんだから、この世界の
 宵ちゃんと真夜(よる)くんに
 会いたくてたまらない。
 
 (夢が醒める前に会えるかなぁ。 ――あ)

 桜吹雪の中、視界の先に見えた人影に
 向かって、わたしが笑顔で駆けて行く。

 (……っ! うわぁ、似合い過ぎ!
  写真撮りたい! 萌え死にそう!)

 宵ちゃんは女学生スタイルだけど、
 ショート丈の袴にバンド型徽章を付けて、
 パンプスを合わせている。
 真夜くんは絣(かすり)の着物に
 丸首スタンドカラーのシャツ、
 短めの袴に下駄、それに学帽を被った
 いかにもな書生さんスタイル。
 2人とも、色気がすご過ぎる。

 (あぁもう、延々と眺めてたい!
 夢なのが勿体ないなぁ~)

 ……まさかここから、この夢が
 ゲームのような活劇モノになっていくとは、
 この時は思いもよらなかった。

3/19/2023, 3:26:29 PM

【胸が高鳴る】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】

3/19 PM 3:15
「お待たせ、2人とも。
 ホットケーキ出来たよ」
「えっ、なんかすごく分厚くて
 ふわふわしてる! すごい!」
「いつもと違うホットケーキミックス
 でも使ったの?」
「いや、同じだけど。絹豆腐混ぜると
 ふわふわになるってレシピ見たから
 試してみた」
「絶妙に美味しそうな厚みだね!
 真夜(よる)くんが作ってくれるものには
 いつも胸が高鳴るよ~!」
「それは良かった」
「早速いただきます。……うん、美味しい!
 ほんとにふわふわで口当たり滑らか」
「いただきます。……甘さも少し控えめな
 感じになるのね。バターとのバランスが
 良くて、美味しいわ」
「宵とオレには丁度いいけど、暁には
 ちょっと甘さ足りない気もしたから、
 メープルシロップ持ってきたよ」
「見抜かれてる! ありがとう真夜くん。
 ……真夜くんには、乙女ゲーばりに
 キュンキュンさせる才能があるよねぇ。
 なのにどうしてギャルゲーは下手なのか
 不思議でしょうがないなぁ……」

3/19/2023, 9:28:07 AM

【不条理】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】

3/19 PM 2:50
「不条理……!」
「また大げさなこと言って……。
 何なの? いったい」
「だって宵ちゃん! このキャラ、
 攻略出来ないんだよ……!」
「出来ないも何も、パッケージに
 いないんだから攻略対象じゃないって
 ことなんじゃないの?」
「だってすごくストーリーに
 絡んで来るし! メインキャラより
 目立ってない? って時もあるし!
 隠し攻略キャラ感があり過ぎなの!」
「でも、違ったってこと?」
「全キャラ攻略がフラグなのかと
 思ってたんだけど……結局そうじゃ
 なかったし……。
 何度もプレイしてる内に
 1番の推しになっちゃったのに、
 攻略ルートがないなんて
 不条理としか言いようがないよ!」
「暁、ホットケーキ焼いてくるから、
 落ち着いて。
 ……アンケートで攻略したいって声が
 集まれば、ファンディスクとか次回作に
 反映して貰えるかもしれないし」
「うう……ありがとう真夜(よる)くん。
 このゲームの制作会社が真夜くんみたいに
 優しかったら嬉しいんだけどねー……」
「(ひとまず真夜のホットケーキで
  落ち着けるんだから、暁の不条理は
  軽いわね……)」

3/18/2023, 9:34:09 AM

【泣かないよ】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】

3/16 PM 5:45

「もー、真夜(よる)くん、
 いつの話をしてるの~。
 確かにお化け屋敷もホラーも
 今でも苦手だけど、さすがに
 子供の頃みたいには泣かないよ?」
「……本当に?」
「……う。そう念押しするように
 聞かれちゃうと……宵ちゃーん」
「泣かないわよ。真夜は心配しすぎなの」

 怖がりだという古結(こゆい)と宵が、
 泣かないと言い張っている。
 恐怖心は、年齢を重ねると薄れるもの
 なんだろうか。
 子供でも大人でも、怖いものは
 怖いような気がする。

「2人がホラー系がダメなのは
 把握したけど、真夜は大丈夫なのか?」
「オレ? ……オレは、人の手で
 作られたことが明らかなものが
 怖いっていう感覚が分からない」
「なるほど」
「天明(てんめい)は?」
「好き好んで、って感じではないな。
 でも、お化け屋敷やホラー映画なんかも
 誘われて断るほどじゃない」
「あ。それは誘われたことがあるって
 言い方だね、天明くん」
「ああ、サッカー部の仲いいメンツに、
 ホラー好きが1人いるんだ」

 夏休みに、サッカー部員で行った
 お化け屋敷を思い出す。

「……もしかしたら、ミステリーが
 好きな真夜(よる)は、あのお化け屋敷、
 楽しめるかもしれない」
「うぅん、どんなお化け屋敷なのか
 聞きたいような聞きたくないような。
 ……でも気になるから、教えて、
 天明くん」
「本物の古民家使ってるお化け屋敷
 なんだけどな。その家に殺人鬼が潜んでて」
「え」
「そいつに見つからないように
 隠れたりしながら、家の中を調べて
 ヒントやアイテムを探して脱出するのを
 目指すっていう……」
「襲われる恐怖がある中で、探索や推理も
 するってことか。確かに、お化け屋敷と
 しては珍しいし、楽しいかもしれない。
 ……行ってみる?」
「そんなリアルにクトゥルフTRPGを
 体験させられそうなおうちは
 遠慮したいかな!」

 泣かないと言っていたのに、
 完全に涙目になっている古結が
 宵に抱きつきながら言う。
 古結を抱き締め返している宵も、
 平静を装っているようだが
 顔は真っ青だ。
 
「……2人のSAN値が限界を下回りそう
 だから、やめておく」
「SAN値がなんなのかは分からないけど、
 無理なのは見て分かるよ」

 2人には悪いと思いながらも、
 笑ってしまう。
 真夜が過保護になってしまうのは、
 こういうところをずっと側で
 見てきているからなんだろう。

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