「もっと知りたい」
スープを口に運んだ君が熱っ、と呟いた。君は少しだけ舌を出して、火傷してしまった部分少しでも冷まそうとしている。
その姿を見て、君には悪いけど私は少し嬉しかった。もう何年も共にいるが、君が猫舌だったなんて初めて知ったからだ。
こんなに一緒にいても、まだ知らないことがたくさんある。
君のことをもっと知りたい。あわよくば君の全てを知りたい。必死にスープに息をかけて冷まそうとしている君を見つめながら、そんな想いが沸々と湧き上がってくるのを感じていた。
「平穏な日常」
青空の下、あなたと並んで歩く。たわいない話をしながら進む海沿いの道は、今日も潮騒の音が響き、潮の香りを届けている。
そんな平穏な日常を、幸せだと感じる。
この日々を守るために私には何ができるのだろうかと、笑うあなたの横顔を見ながら思った。
「お金より大切なもの」
お金より大切なものって言うと、愛とか家族とか恋人がよくあげられる。
もちろん、それらも大切だと思うけど私が最初に思い浮かぶのは平和だ。鳥が飛ぶ青い空、子供たちの笑い声が響く昼下がり、雨の音に癒される夜。そんな何でもないけど毎日穏やかに過ごせる平和な日々は、お金よりも大切で未来に残していくものなんじゃないかなって思う。
たとえ綺麗事だと言われようと、私は平和を祈り大切にしたい。
「月夜」
月の力って不思議だ。ここ数日、どうしても絞り出せなかった勇気が、月の光を浴びているだけで湧いてくる。透き通った光が、静かに私に寄り添い、一人ではないと言ってくれているように感じられた。
覚悟を決めて振り返ると、そこには何もわかっていなさそうないつものあなたがいる。
私は月の光を背に、あなたへの想いを紡いだ。
「絆」
私とあなたの間には固い絆がある、結ばれてるって信じていた。今振り返ると、どうしてそこまで盲目的に信じていられたのか自分でも不思議に思う。でもきっと、それくらい私はあなたのことが好きだったし、私もあなたに好かれているという願いのような思いで自分を保っていたのだろう。
けれど、真実は残酷だ。あの日から、あなたとは連絡がつかないし一度も会いにこない。そして隣町で、他の人と腕を組んで楽しそうに歩いているあなたを見てしまった。今まで私が見たこともないくらいに楽しそうな心からの笑顔をあなたは浮かべていた。
私が信じ、縋っていた絆は、もはや存在しない幻だったのだろうか。