「欲望」
欲望というのは、悪いものだと思っていた。人は欲があるから他者を傷つけ、破滅に陥る。そう考えていた僕は、できるだけ欲望の声に耳を背け無視をして生きてきた。
けれどある日君は僕に言った。
「人間は欲望があるから成長できるんだよ。誰かに迷惑をかけるのは良くないけど、欲っていうのは人間に必要なものなんだ」
君の言葉に、あの日から止まっていた僕の時間が動き出すのを感じた。
君の隣に並び立てるような立派な人間になりたいというのが、今の僕の欲望だ。
「遠くの街へ」
電車を乗り継いで、遠くの街まで、あなたに会いにやってきた。普段の週末は家の中で過ごす私にとって、遠出は新鮮で少しドキドキするものだ。私が住む街とは違う空気の匂いや通り過ぎる知らない人たち。世界が広がったような気持ちになる。
でもドキドキの1番の理由は、きっとあなたに会えるからなのだろう。
「現実逃避」
現実は厳しい。苦しくて辛くて、もう向き合いたくなくて、君の元へと逃げ込んだ。君はいつも、穏やかな笑顔を浮かべて包み込むように優しく私を抱きしめ、弱音を聞いてくれる。君の隣は、いつも夢の中のようにゆったりとした平和な時間が流れる。
だから最近、不安になるのだ。
君は本当に存在しているのか。それとも私が現実逃避の妄想で生み出した都合の良い存在なのか。
そんな不安を抱えながら、今日も私は君の元へ行く。
君との時間が日に日に長くなっていることに目を背けたまま。
「君は今」
君は今、小さな翼を広げて、まさに飛び立とうとしている。七色の翼が太陽の光で煌めき、君の姿は神々しく輝いていた。僕に別れを告げるように一度だけ振り返った後、力強く青い空の向こう側へと飛びだした。
あっという間に見えなくなっていく君の後ろ姿。
君は今、飛び立った。
僕もいつか、あの大空に飛び立ち、君と並んで飛ぶことができるだろうか。
「物憂げな空」
「青空よりも灰色の空の方が安心できて好きなんだ」
そんな君の呟きを聞いた時、この人とは仲良くやっていけそうだなとなんとなく思った。物憂げな印象を受ける空の方が、光の下で生きられない私たちには心地よく感じられるのだ。
私たちは灰色の物憂げな空の下、そっと手を取り合い、支え合いながら歩く。交わす笑顔だけは、太陽のように輝かせながら。