「遠くの街へ」
電車を乗り継いで、遠くの街まで、あなたに会いにやってきた。普段の週末は家の中で過ごす私にとって、遠出は新鮮で少しドキドキするものだ。私が住む街とは違う空気の匂いや通り過ぎる知らない人たち。世界が広がったような気持ちになる。
でもドキドキの1番の理由は、きっとあなたに会えるからなのだろう。
「現実逃避」
現実は厳しい。苦しくて辛くて、もう向き合いたくなくて、君の元へと逃げ込んだ。君はいつも、穏やかな笑顔を浮かべて包み込むように優しく私を抱きしめ、弱音を聞いてくれる。君の隣は、いつも夢の中のようにゆったりとした平和な時間が流れる。
だから最近、不安になるのだ。
君は本当に存在しているのか。それとも私が現実逃避の妄想で生み出した都合の良い存在なのか。
そんな不安を抱えながら、今日も私は君の元へ行く。
君との時間が日に日に長くなっていることに目を背けたまま。
「君は今」
君は今、小さな翼を広げて、まさに飛び立とうとしている。七色の翼が太陽の光で煌めき、君の姿は神々しく輝いていた。僕に別れを告げるように一度だけ振り返った後、力強く青い空の向こう側へと飛びだした。
あっという間に見えなくなっていく君の後ろ姿。
君は今、飛び立った。
僕もいつか、あの大空に飛び立ち、君と並んで飛ぶことができるだろうか。
「物憂げな空」
「青空よりも灰色の空の方が安心できて好きなんだ」
そんな君の呟きを聞いた時、この人とは仲良くやっていけそうだなとなんとなく思った。物憂げな印象を受ける空の方が、光の下で生きられない私たちには心地よく感じられるのだ。
私たちは灰色の物憂げな空の下、そっと手を取り合い、支え合いながら歩く。交わす笑顔だけは、太陽のように輝かせながら。
「小さな命」
細い路地を歩いていると、小さく掠れた声が聞こえた。周りを見渡しても誰もいない。茂みの隙間をそっと覗いてみると、そこに薄汚れた小さな猫がいた。しばらく見守ったが、親も兄弟も現れない。寂しげに鳴くその猫の姿が、1人寂しく暮らす自分に重なって見え、そっと抱き上げた。細い体だが、確かに心臓の鼓動と暖かさが伝わり、小さな命の輝きを感じた。
偶然出会った小さな命。それは僕の心に暖かな火を灯した。
こんな僕だけれど、君を幸せに出来たらいい。