「寂しくて」
あなたに出会うまで、ずっと1人で生きてきて、寂しいなんて感じたこともなかったのに。
あなたがいなくなって、静かな部屋も、1人で座るには広すぎるソファも何もかもが寂しく感じる。
寂しくて、会いたくて仕方がない。
早くまた2人で、笑い合いながら言葉を交わしたい。
「心の境界線」
誰のことも信用できなかった。
自分の心に他者の心との境界線を引いて、そこに壁を建てて、ずっと自分を守ってきた。
でもあなたは、その壁をバラバラに壊し、境界線を土足で跨いで、私の心に侵入してきた。
私の心をめちゃくちゃにして、それでも私に大切なことをたくさん教えてくれた。
だから今度は私が、あなたの心の境界線を跨いで、あなたの苦しみに寄り添ってあげたい。
「透明な羽根」
きっとまだ透明で見えていないだけで、私たちの背にも羽根はあると思う。
だって想像すれば、少しだけ感じられるから。
そっと開いて、鳥のように青空を飛び回る姿を。
だから今日も私は思い浮かべる。いつか白い羽根を羽ばたかせて、あの空から見える景色を、飛ぶ感覚を。
その時はきっと、一番にあなたに会いにいくから。
「灯火を囲んで」
パチパチと音を立てて小さな炎が明るさと暖かさを周りに与える。
「どう?少しは気分転換になった?」
横に座る君が静かに私に尋ねる。その穏やかな表情に、君の優しさが全部詰まっている気がして、思わず私の頬も緩んだ。
「うん。火を見てると、気持ちが落ち着く。ありがとう。」
私の言葉に安心したように君は笑った。
赤く光る炎も、私の心を癒してくれるけれど、きっと私1人じゃ寂しさが募るだけだろう。
君が一緒に火を囲んで笑ってくれるから、私はまた頑張れるのだ。
「冬支度」
バラバラになった扇風機の部品をそっと拭いながら、一つ一つはめて組み立てていく。
今年の夏もたくさんお世話になった扇風機に感謝を込めながら、押し入れへとしまう。
そして扇風機と入れ違いにヒーターを取り出した。
北風が窓を叩いて冬の訪れを告げている。
夏から秋へ。そして冬へ。
季節は少しずつ、でも確実に流れていく。
家の中も段々と冬の様相になってきている。
もう少し冷えたら、こたつも出さなきゃな。