【好きじゃないのに】
シールなんて本当は全然興味ない
だけどやってないと仲間はずれにされる
かわいいとは思わないものばかり集めて彼女達と語り合い
本当は鬼ごっこをしたりかくれんぼをしたり目一杯お外で遊びたい
なのに今してるのは好きじゃないメイク道具を集めてかわいいと思わない化粧の褒め合い
全然好きじゃない
全部全部好きじゃない
もっともっと好きなこと沢山あるのに
あぁ本当好きじゃないのに……
これをしないと私は孤独になる
『バカみたい』
大学の頃から付き合ってた彼と今年の春同棲をし始めた。
私は近くの印刷会社の事務、彼はらしくもない営業職。
案の定優しすぎる彼は無理を通すことが出来ずにいつも成績はしたっひ。
練習して、残業して。
せっかく一緒に暮らし始めたのに私と彼はすれ違う生活になってしまっていて、たまに休みがくれば疲れた表情を見せてデートどころじゃない。
そういえば、付き合った頃の様な彼の笑顔を最近見てないなと思う。
いつも眉間にシワを寄せて難しい表情ばかりで、このままでは彼の一番好きな笑顔と優しさが消えてしまいそうで怖い。
少しでも彼を励ましたかった私は、何時になったってどんなに遅くなったって今日は寝ずに彼の事を待っていようと彼の大好物のオムライスを作る事にした。
オムライス、それは彼との思い出の料理。
学生時代あまり料理が得意ではない私が、彼の大好きなものをと初めて作った料理だから。
でも、作った事のないオムライスは真っ黒に焦げてお世辞でも美味しそうとは言えないものに仕上がってしまった。
なのに…。
『うん!美味い。本当に美味いよ。』
優しい彼は嬉しいそうに焦げたオムライスを平らげてそう笑ってくれた。
そんな優しい彼を本当に喜ばせたくて何度も何度も練習したオムライスは、今では誰に出しても平気なくらい上手くなったと思う。
鼻歌交じりに出来上がったオムライスをお皿に乗せ、いつでも温め直せるようにラップを掛けた時、机の上のスマホからメッセージアプリの通知音が聞こえた。
彼からの連絡。今日は早く帰ってくるのかとワクワクしながらメッセージアプリを開けば。
【飲み会。遅くなるから何時も通りにしてて。】
そんな彼からのメッセージ。
絵文字もなんにも無い文面から目を離し、私は机の上に乗った2人分のオムライスを只々眺めた。
たまには書かないとね。
最近何も書いてない。
でも書く事を無理にしちゃうと疲れて嫌いになっちゃいそうだから、このペースが一番なのかも。
これからも、とびきり好きを詰め込んだ文章。
たまにでもいいから書きたいな。
【欲望】
あの人が似合うからあれも欲しい。
あの人がおすすめていたからあれが欲しい。
手に入れたら次の物。
また手に入れたら次の物。
どんなに手に入れたって欲望は絶えない。
本当に欲しい物か分からないまま次から次へと欲しくなる。
あの人になれる気がして。
あの人に近づける気がして。
まだまだどんどん手を伸ばす。
私は私であってあの人ではないのに。
そんな事理解しているのに。
暗闇のどん底にいる私は。
輝くあの人になりたい欲望が潰えない。
『枯葉』
学校帰り友達のみよちゃんと歩いた木枯らしか吹き始めた秋の思い出。
私達の帰り道、ある路地に行くと必ずおじいちゃんがしゃっしゃっとリズミカルな音を立てて箒で地面を掃いているお家があった。
大きな通りから風が入り込む裏通りの突き当たりにあるおじいちゃんの家。ちょうど通りの街路樹の落ち葉の吹き溜まりになってしまって、毎日掃除をしないと門が葉っぱで埋もれてしまうんだ。って帰りがけに質問した私達に優しい笑みで嫌な顔ひとつせずおじいちゃんは教えてくれた。
確かに枯葉の量は多くて、毎日片付けないと次の日にはもっと大変になっちゃうなと思ったのは今でも覚えてる。
しかも、おじいちゃんは腰が悪いのかいつも腰を叩きながらなんとか片付けをしていた。
「あんないっぱいあるとおじいちゃんも大変だよね…。」
「うん…。今日はおじいちゃん腰も痛そうだった。」
おじいちゃんから話を聞いた次の日。
いつものようにみよちゃんと帰っていると、おじいちゃんの家の側に近づくに連れて昨日のおじいちゃんの様子が思い浮かんでなんとなくそう口にしてしまっていた。
するとみよちゃんも同じ気持ちだったのか悲しそうな表情で頷き返して、直ぐさまひらめいた様子で直目を大きく開いてあ!と声を上げた。
「なら私達で手伝おうよ!私達がやればおじいちゃんも腰痛くないし。」
「うん!そうしよう」
みよちゃんの提案は何故自分はそれを思いつかなかったのかと思うほど魅力的で大きく同意し、私達はおじいちゃんの家に向かった。
おじいちゃんはこの日も腰を労りながらせっせと掃き掃除をしていたので思い切って声をかけてみると、嬉しそうに「ありがとう。」と笑ってくれた。
みよちゃん、おじいちゃん、私でお掃除をすると落ち葉はあっという間に減り、いつもの半分で片付いたよとおじいちゃんも喜んでくれて。
「手伝って良かったね。」
「うん!」
待っていてと家の中に入っていくおじいちゃんの背中をみながら、2人で良いことをしたんだという満足度を得て、小さく笑いあった。
「今日はありがとう。これは、手伝ってくれたお礼だよ。おじいちゃんはもう少ししたら引っ越しをするんだ。最後にこんな可愛いお手伝いさんが居てくれておじいちゃんうれしかったよ。」
優しく声をかけながら戻って来たおじいちゃんの両手にはお菓子がたくさん入った袋があって、私とみよちゃんに一つずつ渡しながらそう口にする。
おじいちゃんは息子さんとこれから過ごす事になり、近々引っ越すのだという。私達くらいの歳のお孫さんが居て会えるのが嬉しいなんて教えてくれた。
おじいちゃんが居なくなるのは寂しかったけど、そんな嬉しそうなおじいちゃんをみるのは私達も嬉しくて、帰り道みよちゃんとおじいちゃん楽しければいいね。なんて話していた。
あれから数年が経った。
私もみよちゃんも大人になり、みよちゃんとは今でも月一回あってお話をしている。
久しぶりにおじいちゃんの家の前を通れば、おじいちゃんが住んでいた家は新しい家族が住んで、小さい子がお母さんのお手伝いをしながらあのときのおじいちゃんと同じ音をたてながら落ち葉を片付けている姿が目に入って、おじいちゃんが今どうしているかはわからないけれど、きっと喜んで居るんだろうななんて一人頬を緩めた。