『スマイル』
「ねぇ知ってた?
他人から笑顔を奪うのは誰でも出来る。だけど、他人に笑顔を作らせるって簡単そうに見えて難しい。」
「え?」
放課後帰り道が一緒になったクラス1のお調子者の男の子。
クラスに馴染めない私の前に立つと、突然真面目な顔をしてそう顔を覗きこんできた。
「全然笑わないから。人って笑わないとどんどん暗くなる。そうなると周りは関わりにくいって近づいて来ないんだ。」
そんな表情を私は見たこと無かったから今でもあの表情を覚えている。
「そう…なの?」
「おう。俺がそう。昔恥ずかしくて何にも話せなくてうじうじしてたら周りか遠ざかった。でも、ちょーっとバカな事したら周りは笑うし、ギスギスする事も無くなったんだ。だからかなり信憑性ある。」
「嘘…。全然想像つかない。」
「やろう?へへっ、俺ちょーっと頑張った。将来はもーっといろんな人を笑わせて、しょうもないなーって元気になって欲しいんだ。お笑い芸人かちょっと夢だったり。あ、皆には内緒やで?だから…馴染めなくても俺を利用していいから諦めんなよ?」
意外な彼の言葉に目をまんまるくしてると照れくさそうに鼻を掻きながら「じゃあな!」なんて彼は走って行ってしまった。
それから彼の姿を見かけるたび彼は私を笑わせるようになり、それに自然と笑っているうちにクラスの中の孤独は無くなった。
『ハイどうも~』
元気よくテレビに登場するお笑い芸人に引き込まれて私はあの頃と同じ様自然と笑いが漏れる。
皆に笑顔を作る。
夢をいまだ実行中の彼はいつまでたっても私の憧れ。
『仲間になれなくて』
輪に入れない自分は酷く惨めで哀れで。
全く興味のなかったアイドルを好きって言っていた。
全く興味のなかった化粧に興味を持ったふりをしていた。
本当は、ドラマ主演のかっこいいアイドルのよりも漫画の中のキャラクターのほうが断然かっこいいって思っているのに。
いつも一人で紙に向かっているなんてキモい。
根暗。
陰気。
直向きに頑張っている彼の悪口にも参加もしてしまった。
誰かを貶しても仲間がいるほうが断然安心したし、みんなが言っていれば言ってもいいなんて思ったから。
本当は、全然違うのに。
仲間はたくさんいるはずなのにいつも息が詰まる。
本当に哀れなのは大多数でいるほうがかっこいいって思っていた自分。
あんなやつの味方になるなら仲間になれないよ。
どんな風に言われたって構わない。
貴方の作品が大好きです。
そう言える本当の自分
大多数の仲間になれなくたって。
そのほうが世界が明るく見える。
『君と』いる毎日は
世界が輝いて見えて新しい発見と喜びに
日々新しい自分になっていく
『空に向かって』
両手いっぱい伸ばせばあの星が取れそうだと思ったから伸ばしつかもうとした。
いつしかそれは取れる物ではないと知った。
けれど、努力や工夫をすれば取れるものかもしれないと必死に伸ばした。
伸ばして、伸ばして…時には諦めて。
それでもどうしても取ってみたくて触れてみたくてまた伸ばし始めてみたりして。
人に笑われようと、誰よりも必死に伸ばしてるのに近づく事すら出来ていない気がする。
それは高く遠いけど。
絶対に諦めたくないから。
今日もまた両手いっぱい伸ばしてみようと思う。
『涙』
涙を忘れてもう数年。
いつの間にか泣きたくても涙が出てこない体になっている。
心は悲しがって、泣いてほしいって訴えかけてるのに表情はいつも無。
どんな悲しい映画を観たって全く動かない表情に、だからあいつはつまらない奴なんだと決めつけられて皆勝手に周りから居なくなる。
俺だってしっかり感動も、悲しみも、喜びも感じ取っているのに。
俺はいつになったら泣けるのだろうか?
いつになったら笑えるのだろうか?
何の感情も表情に出ないなら感情を言葉に素直に伝えればいい。
そう気づいたのは一年前。
丁度桜が満開だった頃。
久しぶりに見た満開の桜になんとも言えない気持ちになって表情には出なかったけど確かに涙を流していたから。
幸せ、嬉しい、悲しい、寂しい、辛い。
ありったけの涙を言葉にしていけばいつか本当に涙が流せる日が来るだろうか。