旅野桜

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8/8/2025, 9:47:02 AM

「心の羅針盤」

行きたい方へ向いていたはずの針は、
一体どこで狂わされたのだろう。
この街の磁場は、私を惑わせた。
でも、これで良かったのだ。
羅針盤に頼らない、本当の旅が始まったのだから。

8/4/2025, 12:02:22 PM

「ただいま、夏」


中華屋のレバニラ。テレビには甲子園。
余ったそうめん。甘くないスイカにかけたアジシオ。
休日の商店街。氷水に浸かった瓶コーラは300円。
肌を焼く日差し。スーパーの袋にはみょうがとカルピス。

これが、昔の日本の夏か。

私はゴーグルを外す。
『ただいま、夏』というタイトルの記憶作品。
なかなか悪くない。
私は3千円でこれを買った。

8/4/2025, 9:40:31 AM

「ぬるい炭酸と無口な君」

高校生の頃、教室の窓から、まだ建設途中のスカイツリーが見えた。
日に日に天へ伸びてゆくスカイツリーを、君はいつも眺めていた。頰杖をついて。
君は無口だった。嫌な奴ではなかったが、たまに話しても、ぬるくなってキレも失った炭酸水みたいに、言葉に歯切れがなかった。
君はいつも窓の外を眺めている。
大学生になっても。
こうして、僕と一緒になっても。

7/29/2025, 9:15:50 PM

「タイミング」

みんなが逃したタイミングだけを集めて、丼に乗せて食べたらどんな味がするだろう。 
後悔の苦味と涙の塩っ気がいい感じに混ざり合って、サザエみたいな味でもするのだろうか。
僕はその食べ時さえ見誤ってしまうのだろうか。

7/26/2025, 4:09:39 PM

どこまでも青い空の下でさえ、窮屈に思えるほどの閉塞感。
飛行機雲が空の涙の跡に見える。
夏の日差しに照らされて、ベッタリと地面に横たわる黒い影。
私は光を求めるが、強い光は肌を焼き、私の中の影を浮かび上がらせるだけなのだ。

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