川原

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5/25/2024, 11:11:54 AM

「降り止まない雨」

巨大な石仏が横たわる小道を
傘をさして降りる
もとはテーマパークのアトラクションだったらしい

故郷の町は
いつも陽が降り注いでいたが
此処に来てからは傘をさしてばかりだ

あの人に 昔聞いたのだ
雨ばかり降っている町に住んでいたと
此処は晴れの日ばかりで良いなと
言っていたのに

尤も 何か約束を交わしていた訳でもない
勝手に私が行方を探しているだけ

子供の頃に隠れ家にしていたと
誰も知らない抜け道があると
たまに話していた 
巨大な石仏の
右の手のひらの辺り 

有刺鉄線を乗り越えて傘を閉じる
扉の開け方も 丁寧に教えてくれていた
まるで私が追いかけて来るのが
わかっていたかのように

今度は私が 手を貸す番だ




5/24/2024, 2:16:59 PM

「あの頃の私へ」

タイムマシンで過去に行けるなら
逃げるなら 今だ
あの頃の私に
そう声をかけたくなるけれど

仮に1つ災いを回避しても
別の更なる不幸に見舞われてたかもしれない
今ある不運は 案外
本来はもっと大きなものだったのに
何かの偶然で回避出来ているのかもしれない

ひとつ歯車が狂えば
あの人にも出会えていなかった
過去の私よ よく頑張ったな
現在の私は誇らしいぞ
胸をはって行け 未来の私達





5/23/2024, 12:48:29 PM

「逃れられない」

それはもう
身に染みている
根っからの不幸体質に
漂うエサっぽさに

多分もう完治はしない
のっぴきならない事情から
逃れられない

だけど同じくらい
幸せな出会いもあって
泣きたくなるような優しさも沢山浴びて
今ここに立っていられる

いつだって逃げたい気持ちと戦いながら
不幸すら添え木にして
どうにか踏み止まっている

ぬかるみにしっかと立って
さて 次の目的地は何処だ









5/22/2024, 2:14:35 PM

「また明日」

このテーマを見て愕然とした

今 この会社に、そう言いあえる人が誰もいない
去年までは三人居た
転勤や退職で皆去ってしまった

クリスティーじゃあるまいに
そして誰も居なくなった

皆 此処を去る時には
変化が億劫で此処にいる私の
きっと何倍もエネルギーを使った
私もいつかは此処を去るけど 
その前に

また明日と また誰かに言えたら良いな


5/21/2024, 1:48:26 PM


「透明ーとうめいー」
と書かれた絵の具のチューブの蓋を
ゆっくりとねじって
パレットに絞り出す
やまぶき色とビリジアンの隣

微かに薄荷の匂いがした

そのまま筆でくるくると溶いて
描きかけの絵の上から
まんべんなく塗っていく
封印していた記憶ごと
凍結していた哀しみごと
密かな痛みごと

透明になれ
ただの過去になれ
消し去りはしないし忘れてもやらぬが
ただの記憶になれ

及ばずながら
貴方の痛みも塗り潰せたらと
また ゆっくりと蓋を戻す
涙にも似た透明な絵の具

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