川原

Open App
5/4/2024, 3:07:20 PM

「耳を澄ますと」

心から笑っている人の顔を見ていると
その人の胸の奥で
鈴が鳴っているようで
かすかにそれは
聞こえる気がする

私が思う気持ちの半分も
あの人は私を思ってくれては
いないかもしれない

だけど
耳を澄ませ 目をこらせ
わたしを見る あの人の胸から
聞こえてくる かすかなそれは
それだけで 
今は充分だ

5/3/2024, 10:38:03 AM

「二人だけの秘密」

貴方が急に居なくなってしまったので
二人だけの秘密は 私だけの秘密になってしまった
もちろん誰にも言わない 
墓場まで持っていくつもり

いつか私も土に還って 何年か過ぎて
木々の芽吹きに 雪解けのせせらぎに
誰か懺悔の声を聞いたなら
ようやく幕を閉じられる
貴方が私に残した 唯一の物語

5/3/2024, 1:13:23 AM

「優しくしないで」

途中で手を離すくらいなら
初めから 優しくしないで

表も裏も
髪の一房 爪の先までも認めて

わかるよ なんて言わないで
わかった と言って ただ聞いていて

話しかけて 話しかけないで
笑いかけて 笑い返すから
髪の一房 爪の先までも愛して

5/1/2024, 1:40:59 PM

「カラフル」

明け方 うつくしい 鳥を見た
つやつやとしたクチバシが
一輪 花を咥えていた
うつくしい鳥に似合いの艶やかな花は

たった今
この世に与えられたばかりのような色をして
微かに運ばれて行った

4/30/2024, 2:08:02 PM

「楽園」

もしも楽園行きの切符があれば
貴方は買いますか

さあ どうでしょう
そこに行けば 幸せになれるのでしょうか

少なくとも今よりは
悩みも飢えもないのだから
争いも病気もないのだから

でもお高いんでしょう その切符は

さあ どうでしょう
楽園には通貨は無さそうだから
片道分に全財産を溶かせば良いのでは

なんだかんだいって
私はこの稼業が気に入っているのかな
此処にも時おり 自由な風は吹くものでね

そう言いながら
貧乏神は
午後のお茶を淹れた
茶柱が立っているなと
死神は思った



Next