はこ

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3/13/2026, 5:00:17 PM

「ね、約束だよ?」

うん、約束。

「忘れちゃだめだからね!」

こんな面白いこと忘れるわけないでしょ。

「んはは!たしかに!」


どこまでも青が広がる世界で、約束をした。

彼女の表情を、声を、約束を。

私は。

ー ー ー

ジリリリリリリ

はっ、と現実に引き戻される。どうしてアラームの音ってこうも不快なんだろう。もうちょっと優雅な音にしようかと悩む。…起きられないから諦めた。冬のお布団は強すぎる。

なんだか夢をみていた気がする。とても綺麗で、いい夢を。顔を洗って、ボーッと鏡を見つめた時、ふとそんなことを思い出した。


小さい頃からよく同じ夢をみる。

どこか分からないけど、とにかく青い世界でひとりの女の子と約束をする夢。

どんな子と、どんな約束したか。

そこら辺は曖昧で、思い出せない。ずっと心の中に重石が乗っているみたいな感じ。それがいいことなのか、悪いことなのかも分からない。

結局いつも、まぁ夢だし、で考えを放棄する。


ベランダに出て太陽の光を浴びる。もう春が近いはずなのに、今日も風が冷たい。ゆっくりと息を吸えば、肺に冷たい空気が入ってくる。ぶる、と体が震える。

見上げれば快晴。この時期は空気が澄んでいて好きだ。

……そういえば、あの夢の世界もたしかこんな。


「見つけた!!」

強い風が吹いて、思わず目を瞑る。

草木が暴れる音と共に、女の子の声。

「やっと!会えた!!」

目の前に降りてきた少女は私の手をとる。

翼も持たない普通の女の子が空から降りてきた。夢?幻?現実を受け入れられない私は思わずその手を振りほどく。

「なに、忘れちゃった?」

なんのことだと困惑する私に、彼女は困ったように笑う。その顔を見ると、なんだか私がすごく悪いことをしているような気持ちになった。

彼女はもう一度優しく私の手をとり、そのまま空に昇る。ぐんぐん進む。家も町も、もうずっと下になった。見えなくなった。私の中に蓋をしていたものが、どんどん溢れてくる。恐怖も戸惑いも、もうなかった。


そこは、夢の世界。

どこまでも青が広がる空の世界。

夢と現実が重なって心が震える。

少女が無邪気に笑う。

「約束したでしょ?」


『ずっと隣で』



ここから始まる物語とか。

2/18/2026, 4:08:10 PM

「私、今日のこと忘れないよ」

夜が更けた住宅街に私の声がぽつりと置かれる。あなたはそれに「大袈裟すぎる」と呆れた顔。
それでも聞くことをやめようとはしないで、私の言葉を待ってくれる。あなたの歩く速度はさっきよりもゆるやかになった。

「この先きっと、ひどいことがたくさん待ってる。その度苦しくなって泣いて、立ち止まってしまうと思う」

私の言葉に、あなたは顔を歪ませる。
あなたのそういうところが好き。私の言葉ひとつひとつを丁寧に聞いてくれる。考えてくれる。想ってくれる。それが愛おしく、たまらない。

一呼吸置いて、空を見上げる。遠くに見える星は、一番二番と増えていって数えきれない。あの空が、今はそう遠くないような不思議な気持ち。

「でもね、私は今日をお守りにして生きていくよ。私には、こんなに素敵な思い出がある。また歩き出せる。だから、大丈夫だよ。」

あなたが頷いてくれるから、私の言葉は意味をもつ。大丈夫が本物になる。私にとって、あなたは神様のようなものだった。

足を止める。もうさよならしなければならない。
お別れはいつだって悲しい。今日が終わってしまうことが、今日はもう二度と訪れないことが、ひどく寂しい。

するりと掴まれた手がそのまま繋がれる。あなたの目が、さっきの私と同じだった。

「また明日」

そう笑ったあなたを見て、私は柔らかな気持ちで今日にさよならを告げられる。


『今日にさよなら』

2/13/2026, 5:29:06 PM

開いてくれてありがとう。この手紙を覚えていますか?
これを何歳の私が、どんな心境で読んでいるかは分からないけど、今より少しはちゃんとしてるとといいな。

今の私は泥みたいな気持ちの中にいます。ぬかるみに足を取られてばかりで嫌になる。できないことばかりが目について、それをどうやったらできるようになるかも分からなくて、ずっとうっすら安定してない毎日。なんとかしないと、頑張らないとって余計に自分の首を締める。今の私には、未来はきっと素敵なものになってる、そんなあやふやな希望だけが救い。

夢は叶った?
一生仲良く闘えるライバルはできた?
メイクは上手になった?もう可愛くなれないって泣くことはない?
お金を気にしないで、食べたいものを注文できてる?
なにか好きなものはできた?大切にできてる?

今は全部が不安。未来の私に、早く迎えにきてほしい。今の私には何もできない。過去の私の方がまだマシだったかも。
でも、中学や高校の頃から成長したなって思うのは、傷の感じ方。前だったらこのレベルの病みで絶望してた。今は病みながらもこの先どうするかを考えてる。かなりマイナス寄りだけど。泥の良いところは時間が経つと乾いて、そこに立ってられるようになるところだね。また水が入るんだろうけど、そしたらまた乾かすよ。未来の私は絶対崩れない城の上にいてほしいな。いや、逆に海とか水系で、流れに身を任せてっていうのも素敵。

ねえ。私、きっと素敵な大人になるよ。
大切なもの全部持ったまま夢を叶えて、私の好きな私になって、今と変わらない笑顔で世界を見るの。

手紙書いてたら元気でてきた。さっき書いた、迎えにきてほしいなんて、お姫様みたいな受け身メンタルも終わってる。この手紙だって強気なまま締める。毎日の小さな私が最強の未来の私に伝えたいこと。

すぐにでもその景色を私のものにしてやるから。
待ってて。


『待ってて』