「ね、約束だよ?」
うん、約束。
「忘れちゃだめだからね!」
こんな面白いこと忘れるわけないでしょ。
「んはは!たしかに!」
どこまでも青が広がる世界で、約束をした。
彼女の表情を、声を、約束を。
私は。
ー ー ー
ジリリリリリリ
はっ、と現実に引き戻される。どうしてアラームの音ってこうも不快なんだろう。もうちょっと優雅な音にしようかと悩む。…起きられないから諦めた。冬のお布団は強すぎる。
なんだか夢をみていた気がする。とても綺麗で、いい夢を。顔を洗って、ボーッと鏡を見つめた時、ふとそんなことを思い出した。
小さい頃からよく同じ夢をみる。
どこか分からないけど、とにかく青い世界でひとりの女の子と約束をする夢。
どんな子と、どんな約束したか。
そこら辺は曖昧で、思い出せない。ずっと心の中に重石が乗っているみたいな感じ。それがいいことなのか、悪いことなのかも分からない。
結局いつも、まぁ夢だし、で考えを放棄する。
ベランダに出て太陽の光を浴びる。もう春が近いはずなのに、今日も風が冷たい。ゆっくりと息を吸えば、肺に冷たい空気が入ってくる。ぶる、と体が震える。
見上げれば快晴。この時期は空気が澄んでいて好きだ。
……そういえば、あの夢の世界もたしかこんな。
「見つけた!!」
強い風が吹いて、思わず目を瞑る。
草木が暴れる音と共に、女の子の声。
「やっと!会えた!!」
目の前に降りてきた少女は私の手をとる。
翼も持たない普通の女の子が空から降りてきた。夢?幻?現実を受け入れられない私は思わずその手を振りほどく。
「なに、忘れちゃった?」
なんのことだと困惑する私に、彼女は困ったように笑う。その顔を見ると、なんだか私がすごく悪いことをしているような気持ちになった。
彼女はもう一度優しく私の手をとり、そのまま空に昇る。ぐんぐん進む。家も町も、もうずっと下になった。見えなくなった。私の中に蓋をしていたものが、どんどん溢れてくる。恐怖も戸惑いも、もうなかった。
そこは、夢の世界。
どこまでも青が広がる空の世界。
夢と現実が重なって心が震える。
少女が無邪気に笑う。
「約束したでしょ?」
『ずっと隣で』
ここから始まる物語とか。
3/13/2026, 5:00:17 PM