『心の灯火』
突然、胸がすっとしてなにかが消えた。
悲しみが泣いている
一つずつしずくがこぼれる
少しずつ溜まっていく
いつか溢れて何かが消えるとわかるのに
涙は消えない、止まらない
ある日起きたら
突然、胸がすっとして何かが消えた。
悲しみの涙が見えなくなって
暗闇に水の滴る音だけが響く
悲しみが泣いている
『開けないLINE』
公式ラインしか入れてないLINE。
ラインの通知が鳴った。
一番くじの通知か?そう思って確認した。
知らない名前。
知らないアイコン。
どう見ても公式ラインじゃない。
不思議より、困惑より、恐怖が勝った。
知らないようで知っている、あの子のライン。
クラスのあの子。
高校で一緒になった女の子。
特に話したことも無ければ、
関わりがあるわけではない。
『不完全な僕』
「おや、カナタ、どうしたんだい?」
「博士…捨てられた猫がいて…僕、可哀想で…」
「…そうか、カナタは優しいね。」
「博士…僕には何もできなかった…」
そう言って、僕は泣いた。
博士は何も言わず、隣にいてくれた。
「……えぇ。はい。……!…それは、、、いえ。えぇ、はい。わかっています。………はい。…え、、?…はい、失礼します。」
分かっている。
私は彼を、
“…カナタを破壊しなければならない。”
「…博士?最近考え込んでいますよね、大丈夫ですか?」
「、、大丈夫だよ、ありがとうね。」
「そうですか!よかった!」
彼は、優しい子だ。
だからこそ、こんな形で産まれるべきではなかった。
…軍の兵器になるために。
彼の感情を消さなければならないのに。
私にはそんなこと、できなかった。
私が不甲斐ないばかりに。
私の思考が不出来なばかりに。
私の設計が不完全なばかりに。
私は、この手で、君を…
消さなければならない。
「博士…?」
「あ、あぁ…すまないね。……カナタ?」
「…………」
「何をしているんだ!!!!今すぐやめなさい!」
「ううん。止めない、博士。」
そう言っている俺の手には、
“人ならば” 死ぬものが握られていた。
『香水』
君の横を通り過ぎたとき
いつもと別の甘い香りがした。
あぁ、また別の女に変えたんだ。
早く僕に帰ってくればいいのに。
君の横を通り過ぎたとき
いつもはしない爽やかな香りがした。
あぁ、やっと女を見つけたんだ。
早く俺から離れてくれればいいのに。
『言葉はいらない、ただ・・・』
いろんな人と挨拶を交わして席にカバンを置く。
机の横に掛けるだけだからそのままにして、
汗拭きシートを取り出しつつ、話す。
和「りのんちゃん、ゆめっちおはよ~」
璃音「なごちゃんおはよ」
夢「汗だくじゃん笑」
和「自転車だったからさー」
朝の挨拶をしたら、いつも通り時間割の話と、
各々喋りたいことを話す。
夢「今日のポケモンスリープ全部イモムシ…」
和「また?笑笑」
璃音「そーゆー時もあるさ〜」
和「あ、璃音ちゃん、今日朝学は?」
璃音「多分英語〜」
夢「\(^o^)/」
璃音「今日、コレ持ってきた。食べる〜?」
和「後でもらうわ!」
夢「眠くなったらもらう〜」
そんなこんなしているとチャイムが鳴る。
休み時間も雑談して、お昼も一緒に食べて、放課後になる。
夢・璃音「また明日〜、ばいばーい!部活がんば!」
和「うん、がんばる〜。気をつけてね〜」
そう言って、2人は帰っていく。
4階の奥の階段のすぐ横の教室。そこが部活の活動場所。
和「お疲れ様でーす」
弥璃「おつかれちゃちゃ〜、今日部活休みだって。」
和「あ、そうなんですか?分かりました〜」
弥璃「べにと、きいと、しゃけと、ひでさんはもう帰った」
和「こだちゃん先輩も帰りますか?」
弥璃「そだねー、帰るかな」
和「分かりました、お気をつけてぇー」
そんなこんなで、先輩も帰った。
この部屋は演劇部員しか使えない。
部活がなくても、勉強には使える。
和磨「お疲れー、今日部活休みだってね」
和「らしーよ」
和磨「ちゃちゃは勉強してから帰るの?」
和「テスト近いからね〜」
和磨「じゃあ俺も勉強しようかね」
和「いーんでない?」
7時間目も終わったばかりでまだざわざわしている廊下。
クーラーも止められてじわじわと暑くなる教室。
和磨と私は教室の窓とドアを全開にして、
窓側の机に座って勉強道具を広げた。
そのまま、廊下のざわめきを置いて、それぞれの課題に取り組む。
だんだんと日が落ちて、廊下の喧騒は止む。
今日は木曜日だから、4階に残っている人は居ない。
ただ、私と和磨を除いて。
私達は言葉を交わさず、只々勉強を続けた。
私は、左手を置くはずのところに文鎮を置いて、
右手でシャーペンを持つ。
和磨は、右手を置くはずのところに文鎮を置いて、
左手でシャーペンを持つ。
空いた2つの手を、人目を避けるように机の下におろして。
太陽が沈んで、
月が顔を見せ、
自転車を漕ぎやすい時間になるまで。
左手と右手は繋がれたまま。