『不完全な僕』
「おや、カナタ、どうしたんだい?」
「博士…捨てられた猫がいて…僕、可哀想で…」
「…そうか、カナタは優しいね。」
「博士…僕には何もできなかった…」
そう言って、僕は泣いた。
博士は何も言わず、隣にいてくれた。
「……えぇ。はい。……!…それは、、、いえ。えぇ、はい。わかっています。………はい。…え、、?…はい、失礼します。」
分かっている。
私は彼を、
“…カナタを破壊しなければならない。”
「…博士?最近考え込んでいますよね、大丈夫ですか?」
「、、大丈夫だよ、ありがとうね。」
「そうですか!よかった!」
彼は、優しい子だ。
だからこそ、こんな形で産まれるべきではなかった。
…軍の兵器になるために。
彼の感情を消さなければならないのに。
私にはそんなこと、できなかった。
私が不甲斐ないばかりに。
私の思考が不出来なばかりに。
私の設計が不完全なばかりに。
私は、この手で、君を…
消さなければならない。
「博士…?」
「あ、あぁ…すまないね。……カナタ?」
「…………」
「何をしているんだ!!!!今すぐやめなさい!」
「ううん。止めない、博士。」
そう言っている俺の手には、
“人ならば” 死ぬものが握られていた。
8/31/2023, 1:16:19 PM