4/18/2026, 3:12:11 PM
無色の世界
三方向を壁に囲まれた埃くさい四畳半は、鉄格子の向こうを夢に見せる。壁をつたわる外の気配が、私に反省を促した。
無限に広がる空想の世界が、かえって私の身柄の不自由を確固たる現実のものだと認識させた。惨めさを紛らわすために、再び格子の前にたち左手を壁につけた。壁に奪われる体温は、私を四畳半に引き戻し、無限の世界は無色であったことに気がついた。
4/17/2026, 10:58:23 AM
桜散る
風の冷たい日だった。玄関を出たところに、桜の花びらが数枚落ちていた。地面に張りついたそれらは風が吹くとパタパタ動いた。エサを待つ金魚のように見えて、愛らしかった。
私の家は小高い丘に建っているため、どこか下の方から吹き上げられてきたに違いなかった。
かわいい金魚を一匹つまみ上げ、シャツの胸ポケットに入れた。辺りはすこし暖かくなっていた。
4/16/2026, 11:24:37 AM
夢見る心
家の前を通る消防車のサイレンが、プロ野球中継の音を掻き消した。タイムリーヒットを放った若い選手が塁上で大きなガッツポーズを見せ、数万人のファンは総立ちで祝福していた。
サイレンが遠ざかり、いまだ興奮した様子の実況が部屋に響いている。テレビ画面には応援タオルを掲げる子どもの姿が映し出された。
テーブルに置いてあるケータイが鳴った。上司からの呼び出しだった。ため息をこぼしテレビを消して立ち上がったとき、真っ黒の画面に写った自分が目にはいる。ふと、鳥になって大空を飛びたいと思った。
4/16/2026, 8:18:58 AM
届かぬ想い
並んで星空を見上げたとき、僕は星に興味がないことを思い出した。横に目をやると、空に夢中な横顔が、星よりもずっと美しい。
満点の星空が、悔しそうに瞬いた。