俺の街には、海の底に指輪を投げ入れると幸せが深く長く続くと言う言い伝えがある。そう言う話を滅多に信じない俺だったけどその話は妙に興味を持った。と言うのも俺には二年ほど付き合っている彼女が居るからという理由だが、
そんな事を思ってから数年経ち、俺はその彼女と結婚し、今は俺達二人の間に芽吹いた命がお腹の中にあった。そんな幸せ絶頂の時に、息の根が止まりそうになりそうな知らせが届く。病院に検診に行った妻が事故にあったのだ。そして現在"重体"らしい。どうすれば良いか、まずは病院に行くのが先だ。だがその前に俺はある所に寄った
それから数時間後、また知らせが届く。それは、重体が軽傷に変わったと言う話だった、病院の人も偉く驚き困惑している声だった。でも俺には理由が分かるのだ。
俺は病院に向かう前、あの言い伝えのあった海に向かった。不思議と興味をもったあの場所だ。二人が助かるなら、そう思い、指輪を取り海に投げ入れたのだ。 その結果、先程の効果かは分からないが二人が無事と言う連絡が入った。まさに奇跡だ。
そこで俺は思う。
『 ...噂ってのは、たまには信じてみるもんだな。』
そう呟いては、彼女とお腹の子が居る病院に急いで向かった。
#海の底
僕は犬。
元は捨て犬だった、でもそんな時、とある優しいお爺さんが僕を見つけてくれて拾ってくれた。
その人の家はそんなに裕福では無く、田舎町のどちらかと言うと昔の雰囲気が漂う家。でもとても心地の良い家だった。
その家にはお婆さんが居てどうやら夫婦で暮らして居るみたいだ。二人はとても仲が良く毎日笑っていた。そこに僕が近寄ると優しく頭を撫でてくれる。
僕がこの家に来て半年、お爺さんが体調を崩した。
前から患っていた病気が再発したみたいだ。日に日に体調が悪くなっていくお爺さんを見るのは辛かった。少しでも安らぎになってもらおうと僕はずっとお爺さんの傍に寄り添って居たんだ。
そんな僕の頭を撫でながらお爺さんは呟いた。
『 お前に会えて良かった、お婆さんを宜しくな。』
そんな事言わないで欲しい。でもその声色は死を覚悟したような、そんな声色だった。
其れから一週間後、お爺さんは何とも幸せそうな表情で深い眠りについたんだ。僕はそれからと言うものお婆さんに精一杯の幸せを注いであげた。
お爺さん、ありがとう。最近気付いたけど、僕は
お爺さんに会うために、いや、お爺さんに会いたくて産まれて来たんだと思う。貴方の飼い犬になれて僕は光栄だったよ。僕が死んだら絶対迎えに来てね、そしてまた僕の頭を優しく撫でてよ。
それまで僕はお婆さんに一生分の幸せを贈るから。
#君に会いたくて