NoName

Open App
5/1/2026, 2:42:10 PM

「カラフル」

 どうにも走り出したいような高揚感が身体の中を駆け巡っていた。私は今日、大きな決心をしたのだ!
 窓の外の強い風も、今朝の鬱屈とした雨も、もう気にならない。私の胸中はこの極彩色に染まりきってしまった!可愛くもない、乱雑にものが置かれた部屋。積み上がった教科書と本。もう日付を超えそうな時計。何もかもが可能性に満ちているようで仕方がない。私にはやるべき事があるのだ。誰が何を言おうともやり遂げねばならない。きっとあの日の朝焼けのように清々しい光が待っているに違いない!もう走り出してしまった。夜を追い越して、明日すらももう追いつくことができない。カラフルな私の想像力は膨らみに膨らんでぼかぼかと部屋を埋め尽くす。いつしか部屋には留まっていられずに廊下へ、居間へ、道路へと飛び出していく。この町を埋め尽くすカラフルは私の希望。飛び跳ねて町をかけるガラス瓶は私の身体。むくむくと溢れていく光を集めて、集めて、閉じ込めてやる。飽和した瓶を飲み干して、また光を集める。街をかける私の身体はとどまることを知らない。なんと美しい世界!こんなにも希望に満ち溢れているというのに今まで私は何をしていたのだろう!明日の朝日を拝んだら、今日もまた私はこの町を駆けるのだ。

「カラフル!」

4/30/2026, 12:56:12 PM

 今日もまた、人もまばらな各駅停車に乗って帰る。そろそろ夏が近づく空ももう日が沈みきってしまって、すぎていく街灯のあかりがちらちらとみえている。向かいの窓に映る私は酷く無愛想で、可愛くない顔をしている。最近レンズを交換したばかりの眼鏡はそんな私の表情までしっかり見せてくれて、どうも落ち着かず鞄に顔を伏せてみたりした。ゴールデンウィークも近づく今日この頃、二年ほど前の自分ならふらふらと遊び歩いて不安なども大して気にしていなかっただろう。しかし高校も二年目。そうは言っていられない。電車に乗れば参考書を開く学生の群れが視界に入り、授業の休み時間には課題やら予習やらに勤しむ同級生が目の前にいる。私はそれを見て少し焦って、結局は後回しにしてしまうことの繰り返しをしていた。こんなことを考えていると、駅から家までの夜道もなんだか長く感じてくる。
 私の持病はきっと怠惰病。面倒くさいことを一度でも思い立ってすぐ始めることができれば治る、たったそれだけの病だ。怠惰の悪魔はベルフェゴールだが、私はきっと彼にも認められるのではないかとおもう。怠け者として。勉強も、読書も、趣味も、一度さぼってしまうともうだめだ。なにもかもに身が入らない。今日の課題に明日の予習、趣味の読書から進路の悩みまで。やるべき事はあるはずなのに、やることが無いと言ってベッドに横たわるのだ。
 なんとか今日を乗り切った、とだらだら思考回路を繋いでいく。こうして書いていると、自分が情けなくて仕方ない。人から頼られたいと言いながら、この体たらく。誰が頼ろうなどと考えるだろうか。新しい年度が始まってから早ひと月。今までの時間を取り返せるとは思えないが頑張ってみるのも悪くない。正確に言うと、一年と一月もの間怠惰と怠慢のかぎりを極めていたので、なかなかに苦労するだろうが自業自得だ。とりあえず課題だけでも夜のうちに終わらせてしまおう。
 洗面台の鏡は眼鏡のない私の顔を映す。輪郭のぼやけた表情は、いくらか清々しくととのっているような気がした。

⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯

いつかの楽園へ
 いつかみた陽の光のもとへ
あの日の衝動へ
 あの日みた眩い光のかげへ

とうとう来てしまつたこの日この時、
 すてきなあなたがたに出逢えた喜び。
いつか日のもとに晒されるのは、
 その衝動を晒け出し躍動する光。

「あなたがたに出逢えて本当に幸せでした。」
そう語る言葉はいつしか、いつかのあの楽園へ還る。

4/28/2026, 2:17:51 PM