Lacryma

Open App
4/9/2025, 3:00:46 PM

「ねぇ、あの人元気かな」

ふと呟く貴女に、私は愛想笑いを浮かべる

きっと元気にしているわ、なんて

何も知らずに返せたらよかったのに

あの人ね、結婚したのよ

隣町に引っ越したのは、そこに家を建てたから

営んでいた花屋も移転して盛況しているみたい

お相手はパン屋の娘さんだって

美男美女でお似合い夫婦だなんて持て囃されて

毎日幸せに暮らしているそうよ

でもだからこそ、そんなこと貴女に言えないわ

あの人を何年も想い続けてきた貴女に

報われなかった心を貫くような現実を

いつかきっと貴女は知ることになるでしょう

想像しただけで胸が締め付けられるようだわ

貴女が傷つくところなんて見たくない

あの人のことなんて忘れてしまえばいいのに

4/9/2025, 7:49:18 AM

いつかきっと

この大樹の下で落ち合おう

貴方と交わした遠い約束を

ずっと忘れられずに待ち続けている

貴方はもう来ないとわかっているのに

私の知る貴方は

もうどこにもいないのに

4/6/2025, 9:57:38 AM

ねぇ、星は好き?

夜空を見上げてそう聞いた貴女のことを

なぜかふと思い出していた

別に好きとか嫌いとかそんな感情はなかった

日が落ちればそれは当たり前にあるもので

消えてしまったら、なんて考えたこともない

だからこそ私は軽視していたのかもしれない

貴女という大きすぎる存在を

今までずっと気づいていなかった

意識しようとすらしていなかったんだ

大切なものは失って初めて気づくという言葉を

いつか、どこかで聞いたことがある

私には関係のない話だと思っていたよ

今なら痛いほどよくわかる

今なら、あの時の貴女の問いに

好きだよ、と答えてみせることだってできるのに

3/30/2025, 1:35:48 AM

落涙の箱庭と呼ばれるこの町の中央には

一雫の涙を零し、祈る女神の像がある

「女神のラクリマ」と名付けられたその像は

愛を失くした女神の姿を象ったものらしい

私は、雨が降るたびにいつも彼女を思い出す

今でも愛した誰かを想って泣いているのかと

もう二度と戻らない日々を思い出して

哀惜に囚われているのか、なんて

貴女が聞いたら笑ってくれただろうか

本当はずっとわかっているんだ

過去に囚われ、前を向けないのは私の方だ

数年前貴女を失った哀しみに溺れているのは

他の誰でもない、私のことなのだと

女神様、貴女が微笑むのではなく泣いているのは

私のような人間に寄り添うためなのですか

私のような、愛を失くした人々に

3/20/2025, 5:21:45 PM

素敵な夢だったよ

貴方の隣にいられた日々は

私の人生で最も幸せな瞬間だっただろう

何ものにも代えがたいくらいに

だからこそ後悔しているの

すぐに会えなくなるとわかっていたら

もっと私に勇気があれば…

貴方に想いを伝えればよかった

たとえそれが叶わなくても

ただ一度でも、貴方と手を繋いでみたかった

Next