あの子はずっと抱きしめている
今にも消えてしまいそうな星のかけらを
星になってしまった貴方の記憶を
もしこの声が聞こえるのなら
どうか、あの子を助けてあげて
儚く揺れる光に縋って
届かぬ夜空を夢見るあの子を
私ではあの子を救えないから
貴方でなければ、届かないから
ぽつぽつと雨が降ってくる
それなのに、空は晴れ渡っていて
七色の光が雲の合間を繋いでいる
まるで、二人を祝福するかのように
あぁ、天さえ彼らを讃えている
哀しみに溺れているのは
私ひとりだけ
本当にばかみたいだ
こんなことなら、もっと早く
貴方に想いを伝えておくべきだった
本当はずっと、貴方のことが
誰にも届かない独り言は
教会から響くベルの音によってかき消された
貴女は願いを叶えると言った
でもそれはできない
あの人はもういない
貴女がどんな力を持っていても
この寂しさを消すことはできない
消してほしいとも思わないんだ
この記憶はあの人がいた唯一の証だ
どうしようもない
仕方ないことだよ
あの人はもういない
もういないんだ
大切なものは、ある日突然消えてしまう
今までそれに気づこうともしなかったなんて
全てを失くしてから
貴方を失ってから気づいたの
もっと貴方と話せばよかった
目を見て、愛を注いで
側にいてくれて感謝していると
ちゃんと伝えておけばよかった
今さら帰ってきてほしいだなんて
どれだけ祈っても、天に届くことはないのに
愛してるの一言さえ
もう二度と、貴方に届くことはないのに
私は物語が大好きだった
憧れの最後を見届ける少女の物語や
戦うことを決意した青年の物語など
どれもどうしようもなく悲しいけれど
それでも希望を抱き前を向く
彼らの人生の一欠片に何度も心を打たれた
私も彼らのように、強く在れたら
ずっと、そんな思いを抱いてきたけれど
もし私の人生がひとつの物語なら
きっとタイトルすらないのだろう
言い訳ばかりで、全てから逃げ出した少女は
暗く深い絶望に
真っ逆さまに落ちてしまう
そんな結末が相応しいのだ