「届いて…」(全て一行詩)
Wi-Fiが届かぬ離島から通販注文
Wi-Fiが届かぬ離島からの電子手紙に「元気です」
意図も簡単に連絡不通になってしまうメール
季節毎に送られてくるはずの手紙は今年は一足擦れて
「あの日の景色」(詩)
幼少時に見た景色
小学生時代に見た景色
中学生時代に見た景色
高校時代に入った途端に目の前の景色はがらりと変わった
何かが変わって
何かが変わってない
少しずつ変わっていく風景に
少し寂しく感じていたのに
がらりと変わった
がらりと変わりすぎて
元の風景を思い出すにも
何が変わって
何が変わってないのか
まるで間違い探しのように
あの日の景色の記憶を探す
あの日に
あの年齢の時に
見ていた
あの日の景色はここにあって
あの日の景色はここにはない
「願い事」(全て一行詩)
願ひ事 願ひ事ならず 白紙が揺れる
願ひ事 金平糖並べて 真ん中に短冊を
七夕近し 逢瀬願い 満つ時
「空恋」(一行詩)
空梅雨に蛇の目傘出番なしと我が心
空梅雨に君に笑顔なし片想い
「波音に耳をすまして」(一行詩)
波音の野蒜浜に遠い記憶の波
波音に不思議な声が籠る満月の夜
「青い風」
レトロな喫茶店で貴女を待つ
喫茶店の近くに貴女の仕事場がある
テーブルにはメロンソーダ
ストローでメロンソーダを吸い上げていく
喉に冷たく緑色の微炭水が通り乾いた喉を潤す
時計の針は3時を刺している
貴女がこの喫茶店に来るのはいつも3時過ぎだ
もう一口
メロンソーダを吸い上げていく
(カランカラン)
店のドアに括り付けられていた鐘が鳴る
「お連れ様がお待ちですよ」
「ありがとう。ブルーソーダをお願いするわ」
「かしこまりました」
私は入り口の方を見る
貴女は店員と会話した後
私の座る席に向かってきた
「お待たせ。」
貴女はビジネスバックを椅子の端に置いた
「ブルーソーダ、お待たせしました」
運ばれてきたのは、貴女がいつも注文する
ブルーソーダ
私たちに席に「青い風(ソーダ)」が届く
カランと氷が鳴った