「また会いましょう」
また会いましょうは
もう二度無いて思っていたけど、
意外な場所でまた会いましたね
「約束しましたので」と
アナタははにかむ
最後に別れた時と同じ笑顔
ちっとも変わっていない
「互いにあのままかな?
あ、でも私は何歳か年を重ねてるけど」
彼女は少し苦笑いをした。
「うん。また会いましょうと葉書に書いたね。
それがまさか最後の葉書になるとは自分でも思わなかったけど」
(最初に出会った場所で再会は叶わなかったけど)
(僕はあの年のまま。彼女は少し年上になってしまったけど)
此処で再会出来たのは、
「互いに黄色の花が咲く河辺」で会えたらと願ったから
-暗闇の部屋で男が目の前にある記帳に書かれた
二人の名前にバツを付けた-
「スリル」
5000以上のダウンロード数があっても
レビューが書かれていない。評価する記事も見当たらない。
海外製のアプリをインストールするには少しの勇気とスリルを味わう。
「飛べない翼」
世の中に羽ばたく程の強さのない翼を持たずに
地に足をペタペタしながら歩くだけでも良いのだよ
◆
お前は飛べるさ
ただ産まれてきた時代が悪かった
自由に飛べなくさせてるだけで
俺はお前の自由を奪ってしまった
お前は武器とならずにすむ時代に産まれたかったか?
◆
あぁ、お前はトロイからそうなるんだ
低空で飛んでりゃそうなるだろう
安心しろ
俺らがちゃんとお前の肢体を食って弔うさ
「脳裏」(一行詩)
何を食べても眉間に皺を寄せながら食べる君の姿
「ススキ」(一行詩)
朝寒の風揺れるススキの群れ
「意味がないこと」
「後輩。君は意味がないことだなと思うことはあるか?」
先輩は箸でナポリタンをラーメンのように啜って食べていた。
「意味がないこと…ですか?使い道が見当たらないのに専門誌とか買ってしまい、途方にくれてるとかですかね?」
先輩は目を見開き突き刺した卵を口に運ぶ手前で箸を止めた。
「君はあれか?能力者か?今、私がまさにその状態だ。
古本市で輸入本を買ってしまい途方にくれている。
英語の学習と思えば良いのだが…学習になるような本ではなくてな…」
先輩はビニール製の袋から本を出してきた。
「…先輩…職場に持って来ちゃ駄目なやつです…」
先輩に見せられた本は、表紙には半裸になった女性が横たわった姿。
表紙には見出しは全くない。
パラパラ捲っていくとどうやらアダルトちっくな雑誌のようで開いていくと半裸になった女性に全裸の女性に下着姿の女性と…
それから…大人の玩…まぁ…僕の口から云えないけど…。
「なんで…買ったんですか?」
パラパラと捲り閉じた。ここは職場。職場の食堂。
端っこのテーブルとは云え、誰が通って見られるかわからない。
「ふむ。ファッション雑誌か何かだなと思って買ったのだが、
家に帰って開けてみたら、この有り様だ。まさかアダルトな雑誌だと予想外でな、これでは英語の学習には不向きだ。意味がない買い物になるだろうか?」
先輩は箸に突き刺した卵を頬張ってからトマトに箸を運んだ。
僕はアダルトちっくな表紙を改めて見る。
この手の雑誌の好みは人それぞれで内容を見る限り、
載っている女性は全員巨乳でアメリカにアジアに中東の女性だ。
海外の巨乳さん好きな方には、意味がある買い物になるだろうけど…。
ボチャン。トマトがワカメスープに沈む音がした。
「…どうなんでしょうかね…?」
僕は先輩がこの手の本を購入して何の躊躇いもなく職場に持って来て
僕に見せてくるなどの意味こそが知りたい…。
「私には合わない雑誌だ。私が持つのも意味がない。総務課の馳部に見せてくるか。馳部はどうやらあちらさんの巨乳が好みのようだし。気に入るかもしれん」
先輩、なんでそんなこと知っているのだろうか…?
意味のないものに興味がないて思ってましたよ…。
先輩はアダルトっちっくな雑誌をビニール製の袋に戻し
トマトが沈んだままのワカメスープを飲み始めたのだった。