「閉ざされた日記」
貴女が亡くなった後に
貴女の遺品整理中で貴女との交換日記を見付けました。
和本綴じで表紙は男結びで締められていました。
紐を解いて日記の内容に目を通しました。
病弱だった貴女は病院の看護婦さんのことや
先生や他の患者さんたちとの会話や
手芸を楽しんでいると書いていたことを
思い出しました。
最後のページには小さな紐で綴じられていました。
解くにも特殊な結び方のようでキツく結ばれていて
手では解くことは出来ませんでした。
このページだけ、何故、見れなくしてしまったのか、
私には分かりません。
ハサミで切ろうとしましたが良く紐を見ると
その紐は彼女が身に付けていた腰紐。
「…そっか…。自分がもう死ぬのが分かってたから…、
最後のページに…」
私は、彼女が、最後のページを見れなくしたのか理解出来ました。
日記を箱に仕舞い、他の残された腰紐で縛り直し、
箪笥に仕舞いました。
もうこの先、箱を開けることはないでしょう。
亡くなった彼女が決めた「閉ざされた日記」なのですから。
「木枯らし(凩)」
暖冬と云うてたのに木枯らしが吹いているではないか?
凍てつく風の中で珈琲の温もりはすぐ奪われるが、
部屋で飲むよりも何故か美味く感じるのだ。
「美しい」
この世には自然が産み出した自然体の姿
この世には人間が作り出した美術品の姿
この世には生き物が産み出した擬態の姿
この世には醜いも美しいも存在している
どれが醜いか美しいか…
「この世界は」
この世界は
欲望の固まり
大金の固まり
承認要求の固まり
性欲の固まり
脆くて
醜くて
けれども
美しい風景も美しい建物もあって
負の風景も負の建物もある
世界は
やはり儚く強いイキモノ
「どうして」
「ただいまー」
帰宅しても彼の返事が聞こえない
いつもは「お帰り」て返事が来るのに
「リビングが暗い…?」
リビングへの戸を開けるとリビングには電気が付いてなかった
何処かへ出掛けたのだろうか?
電気を付けてテーブルの方に目をやると
リビングのテーブルには、
結婚指輪と時計と一枚の便箋が置かれていた
「御免。これ以上、お前との生活は無理だ」
私は彼の部屋を覗いた。勢い良く引き戸を開ける。
部屋はもぬけの殻っぽ。
彼自身が購入した私物は全部なくなっていて、
私が買ってあげた物はそのまま置かれていた
何故?
どうして?
私が何をしたって云うの?
「どうして?」
私の前から居なくなっちゃったの?