″ココロオドル″
昔昔、あるところに一人の男がいました。
その男は大層暴力的で、しかしただの馬鹿ではありませんでした。
男は人を殺してみたかったが、あいにく人殺しはご法度。しかしどうしても殺してみたい。
何とかならないものかと日々頭を悩ませていると、男のもとに手紙が届いた。
【○○という地域では化け物退治が行われている。化け物に立ち向かう勇気あるものは来られたし。】
天啓だと思った。
男は急いでその地域に赴き、化け物退治のための兵の1人となった。
もちろん、比較的平和な世で、その場に集まった誰も戦ったことがないので訓練が行われる。
しかし、その訓練が少しおかしかった。
「なぁお前さん、俺たちは化け物退治に集められたんだよな?だというのにどうして来る日も来る日も人殺しの練習をさせられるんだい?」
男は兵の隊長に尋ねた。自分としては楽しいが、他の奴らにはちと厳しいのではないかと思ったのだ。
すると隊長はひどく可笑しそうに笑いながら答えた。
「お前、俺たちが本気で化け物退治のためだけに他所から人を集めたと思っていたのかい?」
″束の間の休息″
「あ″ー終わらない終わらない終わらないぃ…」
文化祭前日の午後6時。いつもなら「じゃあそろそろ帰ろうか」なんて話してる時間。なのに今日は終わらない。何故って?文化祭前日だからだよ分かるだろ!!!!あっちこっちでやる事たくさんあるんだよ!!
「他の役員は先に帰したのは正解だったな…全員でやっても終わらなかっただろうし」
さらに1時間半作業したがもうタイムオーバーだ。もういい、明日の朝早く来て残りの作業をやる。ぶっちゃけ書類仕事なので1人でちまちまやれる。
ーーーーーーーー
「終わった…」
文化祭1日目が始まる1時間前。終わってくれた…疲れた…あと眠い…ねむ………
「今何時だ!?!??!?」
突っ伏して寝てしまった!!まずい!開会式の用意何もしてないぞ!!?
「あ、おはよう会長〜」
「え、あ、おはよう。今何時!?」
「あと10分で開会式始まる時間」
「ヤバい!!早く準備しなきゃ!!」
「終わってるから落ち着いて〜」
「落ち着いてられるか!!
…え終わってる?」
「うん、終わってるよ〜。僕会長起こしに来たんだ」
「…なんで終わって…?」
「そりゃ副会長の僕が代わりに指示出したからね」
「…??」
「頑張りすぎる会長が珍しく寝てたからさ、ギリギリまで寝かしとこーと思って」
「そうなの…」
「そうなのー。じゃあ行くよ会長。もう開会式始まるからさ」
「はい…」
(寝起きでテンパってた会長かわいー…俺が起こしに来て良かったー!)
(こいつ意外としっかりしてたんだな…)
″力を込めて″
ゴリゴリゴリゴリ
ふぅ、やっぱ疲れるなこれ。
まぁ細かくしないと溶けないんだもんなー…
細いのなら簡単に砕けるけど太いのはしんどいな…
あー…頑張るかぁ…
ゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリ
『次のニュースです。今日の昼頃、異臭がすると警察に通報があり、臭いの発生源と思われる住宅を捜索したところ、排水溝から細かく砕かれた人骨が発見されました。骨の一部は薬品等で溶かされているようで、人為的な犯行とみられます。警察は被害者の身元の特定を進めています。』
「あそうだ。どうせなら骨も細かく砕いてミルクみたいにして飲んでみるか。よーっし、次のお肉で試してみよーっと!」
″過ぎた日を想う″
「さむーい…」
夜のうちに降った雪がかなり積もっていた。この後の雪かきを考えると憂鬱になる。
「小さい頃は雪が積もったらテンション上がってたのになー…」
「お母さーん、あらかた雪かき終わったよー」
「ありがとね〜。あ、そういえば、コロポックルには会えた?」
「は?なにそれ」
「あなた小さい頃に言ってたのよ。『小さいお友達に会った!』って。フキの葉を傘代わりにしてたって言ってたからお父さんがコロポックルじゃないかって」
「何それ、子供の戯言でしょー」
「随分嬉しそうにしてたのに。大人になっちゃったわね」
「はいはいそうですねー」
ひょこっ
とてとて
じーっ
ふりふり
ぴょんっ
″星座″
「お星様どこにいるのー?」
幼い我が子が私に問う。
「お空にいるよ」
「えー?見えないよー?」
困った。昼間は太陽の光の方が眩しいからとかそんな理屈説明したところで理解できるはずもない。
「えーっとねー…」
「お星様はおねんねしてるんだよ!」
我が子の友達だ。
「お星様は夜更かしが好きだからね、お昼は寝てるの!」
「えー!?いいなぁ、僕も夜更かししたーい!」
驚いた。まさか我が子の疑問に同じ子供が答えてくれるなんて。
理屈じゃない。でも納得はできる。
こうして人は成長するのかと納得した。