きのうのおてがみをよまれましたか
みみでおつたえしてもむずかしいので
このはをおてがみのかわりにかきました
これはままならないわたしのおもいですが
あなたはぬかりなくおみとおしのようですね
わたしにはけほどのちえもなにもありませんが
ことばにするだけのせんじんのおしえがあります
(250202 隠された手紙)
上野駅の雑貨店前で、スマートフォンを触っていたら、色黒の外国人2人に声をかけられた。ちょうど私が停車駅かのように、2人はぴたと止まった。
向こうは、14番はどこだとぎこちない日本語で尋ねた。私は、14番乗り場に行きたいのかとすぐに理解し、上野駅の10番以降の乗り場って分かりづらいよねと迷子の相手に同情しながら、辺りを見回した。
偶然にも、左手にお目当ての乗り場に通ずるエスカレーターが見えたので、あっちだと指を差した。
2人はありがとうと言い慣れたお礼をして歩み始めた。私はてっきり日本旅行かと思い込み、彼らの旅路を祈るようにバイバイと手を振った。彼らも手を振ってくれた。
彼らの行く道に私という枝折りがはさまれて、こんな具合に世界の流れを生み出すのだなと愉快になった。
(250201 バイバイ)
旅路の道中から女の身体を作る、
そんな麗しい旅が出来たら良いのに。
砂浜で拾った桜貝を足の爪先にして、
足の甲らしい踏み面の広い階段を一段ずつ踏み、
ふくらはぎの緩やかな曲線に似た橋を渡って、
途中ひかがみのような窪みにつまずき、
柔らかな太ももと同じ白い花を触って行って、
二股の道に迷い迷い、暗いトンネルを潜り、
盛り上がるひじり山を登って降って、
背筋のように真っ直ぐな道をただただ歩き、
うなじの憂い漂う急な坂道を恐る恐ると上って、
黒髪垂らす柳の下をかき乱してはとかしていく。
これはまだ女の身体を生み出す旅の途中だ。
可愛い子にはぴったりの旅になるだろうよ。
(250131 旅の途中)
相手は知らなくても君が知っているのなら、
秘密の窓を眺めるのに充分だろう。
だがまだ知らないのかと、
ただただ優越感に浸りたいだけの
その劣等感コンプレックスを、
君はそろそろ知るべきだ。
(250130 まだ知らない君)
黄金細工よ、貴方の影になりたい。
太陽よりも眩しい貴方の影に私はなろう。
大いなる旅路の血統を受け継ぐ貴方は、
長き旅の果てに見出された希望の星だ。
星は常に天高く掲げねばならない。
星よ強くあれと願う人々の為に、
星よ賢くあれと祈る人々の為に、
貴方は本当に星の如く煌めくだろうよ。
しかし、光の輝きはいつまでも続かない。
太陽と月が交互に天を昇るように、
光も影も、強さも弱さも、裏表の顔を出す。
矜持で強張った光の鎧を外してごらん。
貴方の弱さを夜の帷で覆ってあげよう。
それとも日陰の更紗で包もうか。
木漏れ日のレースも用意してあるよ。
黄金細工よ、貴方の光を支える影になりたい。
(250129 日陰)