長年恋人だった、大好な彼女に振られた。しかも直接会って話したのではなく、LINEで淡白に。
歩きながら考える。私の何が良くなかったんだろう。
私に飽きちゃったのかな。そういえばここ最近どこかよそよそしかったような。
きっと他に好きな子でも出来たのだろう。私は至って平凡な人間だし、私より魅力的なコは沢山いるもんね。
そんなことを考えていると何だか悲しくなってきて、足を止めた。
いつの間にか彼女との思い出の公園の前に立っていた。
少し疲れたのでベンチに座ると、これまでの思い出が鮮やかに蘇ってくる。
高校生の頃はこのベンチに座ってよく話したりしていた。あまりにも頻繁に訪れるものだから、近所の子供たちと仲良くなったりしたっけ。
大学生になってからは少し遠くなってしまったけど、なるべく毎日連絡を取るようにしていた。彼女と話す時間はとても幸せで、私にはとても大切な時間だった。
高校生の頃より遠くまで出かけられるようになったから、去年は二人で温泉旅行なんてしたな。
でも。
──── もう、戻れないんだ。
何だか鼻の奥がつんとする。涙が零れないように上を向いた。
綺麗なはずの青空は灰色の雲に覆われていて、何だか空も泣き出しそうだった。
「 … 私と一緒じゃん 」
なんて自嘲してみても心は重くなるばかりで。
そろそろ雨が降るから帰ろうと思いベンチから立ち上がると、小さな女の子がこちらを見つめているのに気づいた。ランドセルを背負っているところを見るに、小学校低学年ぐらいだろうか。
ふとその女の子が口を開いた。
「まふゆおねえちゃん…?」
この声には聞き覚えがあった。
「あさみちゃん!?」
驚いて名を呼ぶと、あさみちゃんは嬉しそうに頷いた。あさみちゃんは私が高校生の頃に公園で仲良くなった女の子だ。まだ幼稚園児だったのにすっかり大きくなっていた。
「今日はこはるおねえちゃんいないの?」
「…いないよ」
そう答えると、あさみちゃんは不思議そうに首を傾げた。
「こはるに、もう会わないって言われちゃったんだよ」
子供には心配させたくなくて、何でもない風を装いながら話す。
「まふゆおねえちゃんは、それでいいの?」
「え?」
「だって、泣いてるよ」
あさみちゃんに指摘されて、自分が泣いていることに気づいた。
いつの間にか、自分の気持ちを押し込んでいたのかもしれない。
「こはるおねえちゃんと、仲なおりしないの?」
そうだ、私はまだこはるが好きだ。
大好きだ!
理由も聞かないで萎れてるなんて、私はいつからそんないい子ちゃんになっていたんだろう。
「ありがとう、あさみちゃん。今度アイス買ってあげるね」
そう言うと、あさみちゃんは少し不思議そうにしながらも無邪気に喜んでいた。
こはるに連絡して、どうして私も振ったのか聞こう。しつこい女だって思われても構わない。だって、私がまだ納得していないから。
よし、と気合を入れながらふと空を見上げる。
相変わらずどんよりとした雨雲に覆われていたけど、空には小さな虹がかかっていた。
# 3 「 空が泣く 」
スマホの通知音が聞こえると、すぐにスマホを見てしまう。君からのLINEじゃないかと期待してしまう。
友達や両親には既読をつけたら10秒で返すのに、君からのLINEには5分はかけて返信する。
君から返事が来ると胸がドキドキして、まるで私が私じゃないみたい。
君の言葉で舞い上がったり、逆に落ち込んだり。
その度に実感するんだ。
──── 貴方に恋してるんだって。
# 2 「 君からのLINE 」
この命が燃え尽きるまで、否、燃え尽きたとしても君に全てを捧げると約束しよう。
だからどうか。
────僕を置いていかないでくれ 。
「きゃあー!」
誰かの悲鳴が聞こえる。
目の前には、塀に激突しひしゃげたトラックとその間に挟まる血塗れの君。
無我夢中で伸ばした手も、必死の祈りも、どれ一つとして届かなかった。
ただ呆然と立ち尽くすだけ。
ああ、また。
また助けられなかった。
# 1 「 命が燃え尽きるまで 」