NoName

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9/17/2024, 8:26:28 AM

 長年恋人だった、大好な彼女に振られた。しかも直接会って話したのではなく、LINEで淡白に。



 歩きながら考える。私の何が良くなかったんだろう。

 私に飽きちゃったのかな。そういえばここ最近どこかよそよそしかったような。

 きっと他に好きな子でも出来たのだろう。私は至って平凡な人間だし、私より魅力的なコは沢山いるもんね。

 そんなことを考えていると何だか悲しくなってきて、足を止めた。


 いつの間にか彼女との思い出の公園の前に立っていた。



 少し疲れたのでベンチに座ると、これまでの思い出が鮮やかに蘇ってくる。


 高校生の頃はこのベンチに座ってよく話したりしていた。あまりにも頻繁に訪れるものだから、近所の子供たちと仲良くなったりしたっけ。

 大学生になってからは少し遠くなってしまったけど、なるべく毎日連絡を取るようにしていた。彼女と話す時間はとても幸せで、私にはとても大切な時間だった。

 高校生の頃より遠くまで出かけられるようになったから、去年は二人で温泉旅行なんてしたな。


 でも。

 


 ──── もう、戻れないんだ。


 
 何だか鼻の奥がつんとする。涙が零れないように上を向いた。

 綺麗なはずの青空は灰色の雲に覆われていて、何だか空も泣き出しそうだった。
 
 「 … 私と一緒じゃん 」

 なんて自嘲してみても心は重くなるばかりで。

 
 そろそろ雨が降るから帰ろうと思いベンチから立ち上がると、小さな女の子がこちらを見つめているのに気づいた。ランドセルを背負っているところを見るに、小学校低学年ぐらいだろうか。

 ふとその女の子が口を開いた。


 「まふゆおねえちゃん…?」

 この声には聞き覚えがあった。

 「あさみちゃん!?」


 驚いて名を呼ぶと、あさみちゃんは嬉しそうに頷いた。あさみちゃんは私が高校生の頃に公園で仲良くなった女の子だ。まだ幼稚園児だったのにすっかり大きくなっていた。


 「今日はこはるおねえちゃんいないの?」

 「…いないよ」

 
 そう答えると、あさみちゃんは不思議そうに首を傾げた。

 
 「こはるに、もう会わないって言われちゃったんだよ」

 子供には心配させたくなくて、何でもない風を装いながら話す。


 「まふゆおねえちゃんは、それでいいの?」

 「え?」

 「だって、泣いてるよ」

 
 あさみちゃんに指摘されて、自分が泣いていることに気づいた。

 いつの間にか、自分の気持ちを押し込んでいたのかもしれない。



 「こはるおねえちゃんと、仲なおりしないの?」


 そうだ、私はまだこはるが好きだ。
 

 大好きだ!

 
 理由も聞かないで萎れてるなんて、私はいつからそんないい子ちゃんになっていたんだろう。


 
 「ありがとう、あさみちゃん。今度アイス買ってあげるね」

 
 そう言うと、あさみちゃんは少し不思議そうにしながらも無邪気に喜んでいた。



 こはるに連絡して、どうして私も振ったのか聞こう。しつこい女だって思われても構わない。だって、私がまだ納得していないから。


 よし、と気合を入れながらふと空を見上げる。


 相変わらずどんよりとした雨雲に覆われていたけど、空には小さな虹がかかっていた。





 # 3 「 空が泣く 」

9/16/2024, 7:17:01 AM

 スマホの通知音が聞こえると、すぐにスマホを見てしまう。君からのLINEじゃないかと期待してしまう。

 友達や両親には既読をつけたら10秒で返すのに、君からのLINEには5分はかけて返信する。

 君から返事が来ると胸がドキドキして、まるで私が私じゃないみたい。


 君の言葉で舞い上がったり、逆に落ち込んだり。


 
 その度に実感するんだ。




 ──── 貴方に恋してるんだって。




 # 2 「 君からのLINE 」

9/15/2024, 5:37:53 AM

 この命が燃え尽きるまで、否、燃え尽きたとしても君に全てを捧げると約束しよう。

 だからどうか。



 ────僕を置いていかないでくれ 。




 「きゃあー!」


 誰かの悲鳴が聞こえる。

 目の前には、塀に激突しひしゃげたトラックとその間に挟まる血塗れの君。


 
 無我夢中で伸ばした手も、必死の祈りも、どれ一つとして届かなかった。



 ただ呆然と立ち尽くすだけ。






 ああ、また。


 また助けられなかった。


 

 # 1 「 命が燃え尽きるまで 」