時よ止まれと願ったよ
それでも時は止まらない
希釈されていく過去の中で
純度を増す君への想い
時が止まったかと思ったよ
初めて出会ったあの瞬間
風に舞う桜の中に
微笑む君がそこにいた
時よ止まれと願わずとも
君の浴衣と微笑みが
すべてを奪ってしまうから
もう花火の音は聞こえない
時が止まったかのように
静かに過ぎる秋の夕暮れ
君が隣りにいるときは
もう明日なんていらないね
時が止まってしまったよ
明日になれば君はいない
乾いてしまった冬の空に
煙となって消えてゆく
時よ止まれと願ったよ
それでも時は止まらない
純度を増した君への想いが
僕を明日へ連れて行く
〜時間よ止まれ〜#4
咲く花の彩りは尽きずして、しかも元の色にあらず
花畑に咲く花々は、かつ枯れかつ芽吹きて、
久しくとどまりたるためしなし
かの有名な芳丈記の冒頭である。
花の色はひとつとして同じものはなく、
また時とともに移ろうものである。
花畑に咲く花は、それぞれに枯れては芽吹き、
同じ状態でとどまることはない。
自然の美しさや生命の移り変わり、
そしてそれが永遠ではないという
「無常」の感覚が表現されている。
というのが、よくある解説だが、
本当は何を伝えたかったのか。
私などに言わせれば、こうである。
一瞬の花となれ
精一杯の彩りで、見る人の心にうるおいを
惜しみない芳香で、香る人の心にやすらぎを
風に散らした花弁で、去る人の心におもいでを
与え尽くして枯れていく
一瞬の花となれ
〜花畑〜#3
窓の外に雨を聞いて
人知れず泣く夜がある
夜中の雨はとても静かで
静かな雨が私をつつむ
私の世界は雨だけとなり
雨だけの世界に私はいない
いない私の涙は流れ
流れた涙もいなくなる
いなくなった涙の跡も
顔を洗えばいなくなる
朝がきた
雨があがる
〜空が泣く〜#2
画面に映る文字列は
君の小さなこえだった
眠れぬ夜の静けさは
君にも同じことだった
指先で交わすおしゃべりが
夜空の月を高くする
照らしだされた窓辺から
夜ふかしの理由がとけていく
一往復のおやすみで
今日のまぶたが閉じていく
君との夜が明けていく
〜君からのLINE〜#1