「水たまりに映る空」 #24
雨上がりの放課後。
虹が出た部活終わり。
グラウンドの水たまり。
滅多にお目にかかれない虹に目を奪われていたあなたは、足元の水たまりに気付かずに片足をつっこんでいた。
虹だけに向けられていたあなたの意識は、たちまち水たまりに向く。
あなたに意識されていたのが羨ましくて、帰り際に水たまりを覗いてみた。
空も雲も虹も、何も映らない。
ただの土で濁った水たまり。
でも、そこにあなたの驚いた顔が映ったような気がした。
「恋か、愛か、それとも」 #23
この甘い感情は本当に恋なのだろうか。
この熱い想いは本当に愛なのだろうか。
それともただの自己満足なのだろうか。
同性を好きになって真っ先に思ったことだった。
異性愛が当たり前と言われる中、この感情は本当に恋と呼ばれるものなのかと不安を感じた。
この想いは愛ではなくただの自己満足ではないかと疑った。
でも、あなたと過ごしていく中で思う。
これを恋と、愛と言わずに何と言うのだろう。
やっぱり私はあなたが好きだと。
「約束だよ」 #22
約束。その言葉のなんと甘やかなことだろう。
明日、また連絡するからね。
来週、また通話しようね。
~日、ここ集合で。
半年記念日、デートしよ。
次のテスト、一緒に勉強しようよ。
次はそっちから、手を繋いでよね。
次は自分から、先に言うから。
私の手帳は、あなたとの約束でいっぱいだ。
「傘の中の秘密」 #21
まだ、ただの知り合いだった頃の話。
急な雨で、傘を持っていなかったあなたが困って立ち尽くしてたから、思わず声をかけちゃった。
「もし良ければ、一緒に駐輪場までどう?」
そんなに話したこともなかったから、あなたはびっくりして困惑してた。
でも少し逡巡してから「うん。ありがとう」と返してくれた。
ぎこちない空気の中、他愛のない世間話をする。
一瞬だけ、あなたと私の手が触れ合う。
偶然に過ぎなかったけれど、私の胸がとくりと控えめな音を立てる。
あの時に恋に落ちたのかもしれないことは、私と1本の折りたたみ傘だけが知っている小さな秘密。
「雨上がり」 #20
今、あなたに雨が降っている。
とてもとても悲しいことがあって、それがあなたに雨を降らせている。
雨は嫌いじゃない。
でも、晴れの方が好き。
そして、虹はもっと好き。
だから、すぐにじゃなくていいから泣き止んで。
雨もいいけど、あなたには青空の方が似合うから。
あの太陽みたいな笑顔で笑ってみせて。