「君の名前を呼んだ日」 #14
名字、名前、あだ名…
さん付け、ちゃん付け、呼び捨て…
あなたはいろんな名前で呼ばれてる。
でも、あなたを名前にさん付けで呼ぶのは私だけ。
だから、もしも他の人に名前さん付けで呼ばれることがあったら―――
―――私のことを、思い出してよね。
「やさしい雨音」 #13
雨が嫌い。昔のトラウマを思い出すから。
雨が好き。あなたと話した日を思い出すから。
2日とも天気は大して変わらなかったのに、前者は酷く恐ろしく、後者はそっと優しかった。
それはきっと、あの人がとても怖かったから。
それはきっと、あなたがとても優しかったから。
あなたの声が魔法となって私の記憶を塗り替えてくれたから、雨音は優しくなった。
「歌」 #12
去年の合唱コンクール。
500人の視線が集まる体育館のステージの前で。
私は指揮をした。
震える足、固まる指先、そしてあなたと絡む視線。
そのとき私の心拍数があがったのは、きっと緊張のせいだけではないだろう。
なんとか動かした指先が、みんなに歌を紡がせる。
ソプラノの主旋律、男声の裏拍。
それからアルトの、いや、あなたのハーモニー。
もっとあなたの声に集中したかった。けれど、そうするには少し邪魔が多かった。
だから今度は、私と二人きりで歌ってほしい。
あなたで満たされたいから。
君の隣にいたいから。
「そっと包み込んで」 #11
いつも思っていることがある。
好きなのは私だけなんじゃないかって。
告白をした。付き合った。隣に座った。手も繋いだ。寝落ち通話もした。ハグもした。
けれど、あの子が好きなのは私じゃなくて、愛をくれる恋人なんじゃないかと思ってしまう。
私じゃなくてもいいんじゃないかと思ってしまう。
あの子が見てるのは、私ではないような気がする。
それが不安で不安でたまらないのだ。
口を滑らせて不安を漏らした日。
「誰でもいいわけじゃない。あなたが好きで付き合ってるの」
死ぬほど嬉しかった。ずっとぽっかりと空いていた穴が埋まったような気がした。
その言葉が私をそっと包み込んだ。
「昨日と違う私」 #10
さて、ここで問題です。
今日の私は、これまでと何が違うでしょう?
私のこと好きなんだから、分かるわよね?
色付きリップ?
私、優等生だから校則違反はしないわ。
前髪の長さ?
寝坊したから寝癖そのままなの。悪い?
スカート丈?
確かにいつもより1回多く折ってるけど…。
残念!難しいもの、きっと分からないわ。
え?答えは何かって?ふふ、教えてあげなーい。
あなたには絶対教えない。言えないから。
あなたに好きって言われたのが嬉しかったなんて。
ずっと片思いだと思ってたのに。なんとなく付き合ってくれてるだけだと思ってたのに。
だから今日の私はこれまでの私と違って
「あなたに好かれた私」なの。