「Sunrise」 #9
私はずっと、極夜の季節に生きていたようだ。
生まれてこの方、太陽というものを見たことがなかった。というより、太陽に興味がなかった。
別になくたって生活に困るわけじゃない。ただ景色が少し変わって見えるだけだ。
なんて考えていた過去の自分が哀れでたまらない。
初めて見た太陽の、なんと美しいことか。彼女が照らす日常の、なんと輝かしいことか。
私の太陽が、私だけの太陽がこちらに微笑みかけてくれたときの喜びときたら、何物にも代えがたい。
私は彼女に恋をした。
それが極夜を生きた私の、Sunrise。
「空に溶ける」 #8
あなたは空色だ。
冷静さと誠実さを兼ね備えた青に、無垢な愛らしさを感じられる白、それからイタズラっぽい黄色をほんのちょっぴりだけ混ぜたような、そんな人。
けれど青空はあなたによく似合う。互いに溶け合うことなく、引き立て合う。
それはもしかしたら、あなたの誕生色がブラウンゴールドだからなのかもしれない。
茶色に赤と黄色を混ぜた、ちょうど土のような色。
天と地なんだから、そりゃ似合うに決まっている。
青、白、黄。 茶、赤、黄。
かけ離れた色。本当のあなたはどれだろうか。
どんなあなたであろうとも、私があなたを好きなのは揺らがないけれど。
ところで、私の誕生色はベリルグリーンなの。
あなたが空でも土でも、完璧に似合うと思わない?
「どうしても…」 #7
どうしても欲しかったの。
あなたが欲しかった。欲しくて欲しくてたまらなかった。喉から手が出るほど欲しかったの。
最初は気持ちを寄せてるだけで十分だったのに。
あなたに触れたくなって。あなたが他の人と話してるのが嫌になって。
少しずつ、少しずつ、我儘になっていったの。
そして、手に入った。
とってもとっても嬉しかった。けど、人間っていうのは欲深くて、やっぱり我儘になってゆく。
最初はあなたが私の気持ちを知ってるだけで十分だったのに。あなたの心がほしくなって。あなたが話してくれない日が怖くなって。
あなたが欲しい。
どうしても…どうしても、あなたが欲しいの。
「まって」 #6
あなたはいつも私の前を行っている。
前にいるから、私のことを見るのは難しい。
だから、少しだけ “待って” ほしい。
あなたはいつも私で心を動かさない。
別に好きじゃないから、私のことでは揺らがない。けれど、少しでもいいから “舞って” ほしい。
待って、舞って、待って、舞って、待って、舞って
いつもあなたのことばっかり考えているから、少しゲシュタルト崩壊を起こしてしまいそうだ。
「まだ知らない世界」#5
とびきりの笑顔、よく通る笑い声、髪を結ぶ仕草
私だけが知らないあなた
少し照れた顔、眠たげな声、本をめくる指先
私だけが知るあなた
苛立った顔、あでやかな声、授業中に落ちる瞼
まだ知らないあなた。そして、これから知るあなた